baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 貿易赤字

 昨年の日本の貿易収支が赤字に転落したらしい。30余年ぶりだと言う。僕達が子供の頃は学校で、日本には資源がないから原料を輸入して、製品を輸出する加工貿易で国が成り立っていると教わった。実際日本に資源があったらば、米英欧に宣戦布告するという馬鹿な歴史も少しは違っていたかもしれない。とにかく資源に乏しく、人と水以外は殆ど何も自給できないというのが日本の宿命なのである。そこで戦後の商社マンは、日本経済の先兵とおだてられ、また自分達でもそう思い込んで、お国の為と脇目もふらずに滅私奉公して輸出拡大に励んだものである。玩具のようなダットサンを1950年代に車のメッカ、米国に輸出したのも日本の商社マンである。
 日本の貿易収支が遠からず赤字になるお膳立ては既に整っていた。その筆頭は、歴史的な円高と言いながら政府も日銀も無能無策で、成すがままになっている事である。日本製品を1ドル77円で輸出しろと言う方が無理である。そこへ持って来て、ユーロ安は留まる処を知らない。大雑把に言えば、日本の輸出産業は中国、次いで韓国、台湾に汎用品では追い上げられて値段で対抗出来なくなっているので、高付加価値製品で欧州品と競合する構図になっている。その欧州製品がこんな為替の恩恵を蒙っていれば、日本製品が売れる道理がない。
 そして以前から言われている世界一高い法人税がある。そこへ来て、今般の原発事故で電気代も上がるのは避けられない。となれば企業は国内投資を控えて、一層海外投資に精を出す。だから、以前は衣料品や家電製品などが主流であった海外製の日本ブランドが、今や自動車や素材にまで及び始めている。政府が何時までも無策のまま指を咥えていれば、輸出入が逆転するのは元々時間の問題であった。しかし今の潮流が何時までも続けば、何れは日本の製品は壊れないという神話も崩れ去る運命にある。
 貿易赤字になると国内はどうなるのであろうか。現状では産業の空洞化は益々加速するから、国内に残るのは飲食業、小売業や今後更に伸びるであろう医療や介護など、サーヴィス業が中心となって来るのであろう。しかし、サーヴィス業も国内で資金が潤沢に回るから成り立つのであって、その金が枯渇すればそうそう左団扇と言う訳には行かなくなる。実際、製造業の雇用が減れば失業者は増え、国内の景気は停滞する。そこへ幾ら海外から金利や配当が入って来ても、そもそも法人税が海外に落ちてしまうのだから、国や自治体の税収すら落ち込む事になる。
 例えば2050年の日本の経済構造をどう描くのかを、政府がはっきり示す時が来ていると思う。単に年金や医療保険だけの問題ではなく、国家としてどう成り立って行くのかという明確なビジョンを打ち出す事が必要ではないか。そうしないと、産業と共に若い頭脳と労働力も海外に流出し始め、益々国の活力が減退するという負のスパイラルから抜け出せなくなる。政治家に、もっと天下国家を論じる大物が出て来ないものか。