baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 中国流のモラル

 アップルのiPadが商標違反で中国の唯冠科技というIT関連メーカーに其処ら中で訴訟されているそうである。中国々内のみならず、お膝元のカリフォルニアでも訴訟されたと言うから、中国側も相当なものである。背後には業績不振の唯冠科技に貸し込んでいる中国の銀行がいるとも言われている。アップルから出来るだけ金を取り上げて、少しでも貸金の返済に充当させようということらしい。折から、今度はiPhoneも別の会社が浙江省で同じ主旨の提訴をしたというニュースがある。
 アップルの脇が甘かったと言えばそれまでなのだが、それにしても中国人の形振り構わぬお金に対する貪欲さには今更ながら舌を巻く。広東省の何処かの地裁では既に唯冠科技が勝訴して、iPadの販売が禁止されたそうである。上海でも提訴されているが、上海では提訴が受理されなかったと言う情報もあり、僕には実体がどうなっているのかは良く分からない。iPhoneも遠からず中国々内では販売禁止になるだろうという記事もある。
 唯冠科技がiPadと言う商標を、自分で使用する目的で登録したのでは無い事は明白である。とにかく先に商標登録をしてしまって、あとから商標使用料を取るとか商標使用権を売るとかが目的の、金儲けの手段でしかない。同様に、中国では日本関連の商標が沢山登録されていると問題になっている。中にはご丁寧に日本の地名まで謳った「讃岐うどん」だとか秋田なんとか、米沢なんとか、と日本では既にブランドで通っている名前まで登録されていて、それらの例は枚挙に暇がないと聞く。通産省のお役人が知的所有権侵害では中韓台が悪の枢軸であると決めつけていたが、中でも中国のモラルの低さは群を抜く。
 先日も或る人と話していたら、その人の友人の愚痴話を聞かされた。その友人が最近、ブランド商品を中国に発注したそうである。ブランド品だから事細かに契約で取り決めて、勝手にコピーされたりしないように細心の注意を払った。ところが、蓋を開けてみたら発注した商品と全く同じ物が別ルートで同時に日本に入って来て、同じ時期に半値で売られてしまい大損をしたと嘆いていたと言う。受注した量の1.5倍位生産して、闇ルートで正規の流通量の半分位を売り捌いたらしいと言う。正規のブランド料などを無視して売れば、安くなるのは当然である。法的には何か手段はある筈だが、数量限定商品の値段が半値になってしまえば、後から幾ら地団太を踏んでも法廷に持ち込むメリットはないのであろう。証拠集めや法廷闘争に掛る費用を考えれば、結局は泣き寝入りするしかない。
 僕に言わせれば、中国人の商売の遣り方を少しでも知っていれば彼等には契約で何を縛っても全く意味を成さない事は常識である。彼等は、自分に都合の悪い事は、紙に書いてあっても破けば終いだと平然と嘯く。彼等に取って大事なのは、日頃付き合いの深い友人との約束だけである。この約束は例え紙に書いてなくても、余程の事が無い限り破らない。逆に言えば余程付き合いが長くない限り、日本人との契約書などただの紙切れに過ぎないのである。発展途上国では何処の国でも似たような事は起こるが、中国は特別に酷い。
 契約に慣れた欧米人には、非常に分かり難く、アップルには気の毒な事である。特に最近の中国のナショナリズムの台頭が、世間的には到底通らないこの様な非常識を、敢えて押し通す傾向もあるように思う。中国も今や世界第二位の経済大国ではあるが、その経済の規模に見合った品位と社会的な責任を全う出来るようになるには、未だ相当の時間を要するであろうと思わせる一件である。