baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 大飯原発の再稼働

 福井県大飯原発の3号機、4号機の再稼働が秒読みになって来た。
 地震の巣窟の上にある日本列島では今、震災予測を見直す度に発表される予想震度や津波の高さが、次々に悪い方に書き換えられる。その都度、従来の予測を遥かに超える災害があり得る事になるから、国民は益々穏やかではない。しかも福島第一原発の事故のお陰で日本には無闇に放射能に怯える神経症の患者が溢れており、日本中がヒステリーになっているのではないかと心配になる。余談だが、今般政府が新たに発表した食品の放射線基準値は欧米の基準の20分の1とか100分の1とかの、非常に厳しい数字になっていると言う。そんな基準を厳密に適用していたら口に出来る物が半減してしまうのではないかと心配になる。例えば、仕事の度に高い放射線を浴びるパイロットや客室乗務員に、特に特定の病気が多いと言ったデーターでもあるのだろうか。勿論、放射能汚染問題は因果関係が不明なケースが多く、しかもデーターも不足しているから、特に幼児を抱える母親などが神経症になるのは已むを得ない面もある。だから尚の事、誰もが福島のような大事故が再発するのはもう懲り懲りであると思っている。従い、原発再稼働反対と言うのは当然の帰結である。一方で過去50年以上に亘り、日本のエネルギー政策の柱の一つに原発が据えられて来た。クリーンエネルギーの旗頭として、昨年々初までは当時の管直人政権も今後更に原発を増やすと宣言していたぐらいである。その原発が来月にも全台停止してしまう。
 物事の判断には、全体を俯瞰した上でのバランスが必要である。バランスを取りながら、最善が無理なら次善で処理して行く必要がある。原発問題が正にそのバランスが求められる問題と言える。原発だけを取り上げれば、現在の技術に則って議論すれば、日本にはこんなにリスクの高い発電設備はない方が良い。無いに越した事はないのは誰もが認める処であろう。しかしだからと言って、闇雲に代替策もないまま、今迄50年も頼って来た原発をいきなり止めてしまうと言うのは乱暴である。原発が止まっても電力需要は賄えると言う発言をする人がいるが、正確ではない。電力コスト、燃料手当ての問題などを全て無視して、休止中の発電所や緊急用の発電設備を総動員して最も楽観的な需給の数字を突き合わせればそういう強弁も数字上ではあり得るかも知れないが、特にこれから10年、20年と言うスパンで考えれば全く現実的では無い。しかも日本は鳩山由紀夫が国内のコンセンサスも無いまま2020年迄に1990年比25%のCO2削減を世界に公約してしまっている。この数字自体が元々達成が難しいのだが、そこに発電効率が著しく劣る旧式の火力発電所を再稼働したりすれば、公約との乖離は益々大きくなる。そこには地球温暖化に対処すると言う、原発停止とは相反する命題がある。
 原発再稼働に、声高に賛成する人はいない。庶民感情では原発反対が大多数だから、うっかり「賛成」などと言えば袋叩きにされてしまう。しかしそんな一面的な議論だけでは、日本国の経営は成り立たない。日本経済の競争力を少しでも高め、産業の空洞化を阻止する為に安定した低コストの電力を供給し続ける必要がある。この事は将来の国内雇用の改善にも必須の条件である。同時に代替エネルギー問題も解決しなければならない。僕は以前から主張している様に、太陽光発電や陸上風力発電は日本では環境破壊はあっても原発の代替にはなり得ないと予想している。地熱発電は条件が整っている場所があればやれば良いが、これも能力に限りがあるから原発の代替にはなり得ない。将来的には海上風力発電に期待したいのだが、当面は現在の技術では火力発電、それもCO2排出問題を考えれば天然ガス発電しかないと思う。となれば膨大な量の天然ガスを確保する必要があり、シェールガスや更にはメタンハイドレートなどをも採算に乗るベースで開発・確保しなければならない。これらの諸条件を確たるものにするには、未だ相当の時間を要するであろう。その間は、一抹の不安は残っても原発再稼働で繋ぐしかない。同時に、どう見ても条件の悪い原発はこのまま永久に止められるように、今後も可能な節電は恒常的に努力する必要がある。
 ところで野田佳彦の方針ははっきりしている様に見える。そうであるならば何故もっと正々堂々と、原発再稼働の必要性を説いて国民を説得しないのであろうか。何だか世論に阿って、逃げ腰でアプローチしている様に見える。後出し、後出しで再稼働条件が追加される。だから国民も益々疑心暗鬼になる。さらに悪いのは枝野幸男である。この男は内心では、思想的に再稼働反対なのである。しかし再稼働無しでは当面乗り切れない事も、経産相の立場上理屈では分かっているから一見野田の方針に従っている。しかし往生際悪く、自分は本当は賛成では無いのだと言葉の端々でアピールしようとするものだから、結果として言っている事に全く説得力がない。この期にに及んでも未だ「もし需給関係が原発なしでも成り立つのなら、当然再稼働は必要ない」などと中途半端な事を言い出すから、何時まで経っても政府としての結論が出せない。
 この問題では国民全員の同意が得られる筈がない。しかし今は腹を括って、出来る限りの安全対策を施しながらも原発を再稼働するしか途はあるまい。それが政治と言うものである。そして関係者には万が一自然災害が発生した時の安全対策を徹底して、二度と福島第一の際の人災部分を繰り返さないように日頃から心して掛かることである。同時に代替エネルギーを早急に開発するか、原発の安全性を更に高めるか、何れにしても現在の原発の寿命を待つことなく少しでも早くより安全な電力供給体制を確立して欲しいものである。