baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 釈然としない再生可能エネルギーの買い取り

 来月から再生可能エネルギーの余剰分を電力会社が強制的に買い取らされる制度が始動すると言う。ところが再生可能と謳う電力のコストは軒並み高いから、電力会社はそれを量の多寡に拘わらず強制的に買い取らされれば、買えば買っただけ赤字になる。だから赤字にならないようにその逆鞘分を我々消費者に転嫁する事が政府により認められている。しかし消費者には安い電力を選択する権利も方法もないから、電力会社に言われたままに電気代が実質値上がりしても泣き寝入りである。税金ならともかく、企業に払う代金を政府が勝手に決めてしまい、選択肢の無い我々国民には厭も応も無くその金額をツケ回しすると言う訳である。しかも今後新たな投資家が新規の事業を立ち上げる度に、消費者に回ってくるツケはどんどん値上がりすると言う理屈である。およそこんな面妖な話があって良い物であろうか。
 再生可能エネルギーの発電事業者は、競争力のない電力を発電しても販売が保証される。これが一般の商品であれば、競争力がない商品は幾ら作っても売れる筈がないから商売として成り立たない。ところが殊電力となると再生可能エネルギーであれば作れば作るだけ売れるから、投資余力のある企業には涎の垂れるウマイ話である。コストもいい加減なら販売努力せずに作っただけ売れるなら、金があれば、そして企業家としてのモラルが欠如していれば、誰でも投資したくなる。僕に言わせればこんな甘い話は、真っ先にこの話に飛び付いたソフトバンクの様な儲かるなら何でもすると言うモラルの片鱗もない企業が手をだすならともかく、本来まっとうな企業なら手を出すべきではない恥ずべき投資である。ところが昨今は、情けない事に色々な企業が名乗りを上げ始めている。勿論何れも従来は発電などとは縁の無かった企業ばかりである。貧すれば鈍するか。
 福島第一原発の事故で、東電の官僚体質が白日の下に晒され、今更ながらの親方日の丸に誰もが唖然とした。しかし、今回の再生可能エネルギー強制買い取りと、その尻を問答無用で一般消費者にツケ回しする政府の理不尽なやり口こそが、消費者を全く無視し市場原理を一顧だにしないその官僚的な発想そのものが、東電を初めとする官制電力会社の官僚体質を育んだ元凶である事が改めて明白になったと思う。電気が無ければ日常生活が成り立たない、しかも供給先の選択肢もなければ、一方的に決められる電力価格が例え理不尽だと思っても、対抗手段すら持たない消費者だけが一方的に犠牲を強いられ、強欲な投資家は努力もせずに自動的に儲かる、それが今般の再生可能エネルギーの強制買い取り制度だと思う。日頃は銀行に対し債権放棄を迫ってみたりとかく左寄りの発言が多い管轄大臣の枝野幸男も、この件では脱原発路線に沿った再生可能エネルギーと言う表看板があるからか、企業があこぎに儲ける事にも何ら反対した形跡がない。僕は企業が儲けるのが悪いと言っているのではない。ただ、儲けるにはそれに見合った努力と工夫とモラルが必要であり、公正な競争が必要だと言っているだけである。
 本来僕は日本に於ける再生可能エネルギーは既に存在する水力発電以外は、所詮は補助的なもので日本の電力の中軸とは成り得ないと考えている事は何度かこのブログにも書いている。少なくとも現在の技術では到底無理である。将来もっと技術が進歩すれば洋上風力発電や波動発電には可能性が出て来るかも知れないが、それ以外の既存方法は日本の地形では新たな環境問題を引き起こす事はあっても逆立ちしても補助エネルギーの域を出るとは思えない。そんな中途半端な事にはっきりとしたコンセンサスも無いまま国民の金を注ぎ込むこと自体にそもそも反対なのだが、それがボヤボヤしている間に決定事項になってしまっていた。将来的なエネルギー政策の全体像が示されていないままに、個別の無意味な政策だけが一人歩きを始めるのが何とも気に入らない。努力も工夫も不要で競争もない、しかも大した将来性もないのに投資家のみが優遇されるビジネスモデルに税金でもないのに国民が無条件に負担を強いられるなど、どこから見てもこんな不条理な話はあってはならないと思えて仕方が無い。