baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 新総裁の下での自民党

 自民党の新総裁が、巷の下馬評通りの筋書きで決まった。一回目の投票では石破茂が断然トップで、安倍晋三石原伸晃の二位争いは安倍晋三がかなりの差をつけての二位であったが、国会議員だけの決選投票ではトップと二位が逆転してしまった。それでもその差は下馬評程ではなく、石破茂の善戦であった。党員票の過半数を獲得した石破茂が総裁になれなかった事には既に地方の組織からは相当の不満が出ていると言う。地方組織に言わせれば、本当の民意は党員票に反映されていると言う訳である。
 僕は昨晩は現役時代の後輩と飲んでいた。僕の現役時代の職場は基本的には保守派が多い。皆頻繁に海外に飛んで外国人と仕事をしているから、外から日本を見る機会が非常に多いし、日本の経済にも敏感になる。時には日本を代表して批判されている様な気分にさせられる事もある。そうすると自然に、日本に対する思いや外交に対する考え、或いは為替や日本経済に対する考えも僕に近くなるようである。中には極端に反対の人間もいないではないが、大体が自然に僕の様な考えに収斂するようである。その人達が、昨晩は一様に安倍晋三が総裁に選ばれた事に露骨に落胆しているのが想像以上なので少し驚いた。皆が皆例外なく、安倍晋三の精神面のひ弱さを危惧し、政権を放り出した時の無責任さを許せないでいるのである。安倍晋三が総裁の自民党には恐くて票は入れられない、民主党の方が未だ増しかも知れないなどと言い出す者もいた。
 どうも自民党の長老たちは世間を見誤ってしまった様である。安倍晋三は長老が牛耳る派閥の票を集めて、反派閥を標榜する石破茂を逆転した訳であるが、反派閥以前に安倍晋三の過去の無責任さは未だに万人の記憶に新しく、幾ら当人が重ねて自己批判しても到底許されざる仕儀であったのである。僕自身、決して忘れている訳ではなく、それだけに総裁選での思いは反安倍であった訳だが、世間では僕の想像以上にその思いが強いようである。しかし冷静に考えれば、総理大臣ともあろう者がねじれ国会のストレスに耐え兼ねて総理大臣の椅子を一晩で投げ出してしまうという前代未聞の醜聞であった訳だから、当然と言えば当然であろう。そんな男が再び総理になった時に、万が一にも東シナ海で軍事衝突が起きたりした時に本当に職責を全う出来るのか、誰しもが不安に思う。小指で失敗しました、などと言う話とは次元が違う。そこへもってきての地方組織の反発である。
 自民党は結局は未だ古い体質から全く抜け切れておらず、新体制でも多くは期待できないと言う事であろう。そして、幾らこの3年間民主党がミソをつけ続けたとは言え、民主党を見限った保守票が必ずしも自民党に流れると決まっている訳ではないと言う事である。自民党は次期総選挙では、それでも恐らくは第一党になるのであろうが、国民の信頼を取り戻すにはまだほど遠いと言えるのである。同時に、安倍晋三が総裁になった事で、民主党も絶望的な状況が多少は救われたのかも知れない。行き場のない票が、また戻ってくる可能性が出て来た訳である。ここまでの反安倍は僕には少し意外であったのだが、僕にも少し自民党の長老並みに惚けが出てきているのであろう。何れにせよ、人材不足の日本の政界である事には依然として変わりないのが情けない。