baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 日中関係

 日中関係が、尖閣諸島問題をきっかけに悪化したまま、長引きそうな様相を呈している。中国内部の権力闘争から中国共産党大会が例年より1ヶ月も遅れると言うから、内部闘争の熾烈さは想像に難くない。後任の総書記には対日強硬派と言われている習近平が就任すると言われていたが、それも未だ流動的だという最新情報が香港筋から流れていると言う。そんな暗闘の最中に、振り上げた拳を下ろせる訳もないから当分は状況改善は望み薄で、場合によっては今以上に危険な状況になる可能性も否定出来ない。
 ただ、僕は中国側も今般の野田政権の対応は少し読み違えていたのではないかと思う。政府に不満を持つ貧困層をを焚き付けて、日本製品不買運動や日系工場の破壊、放火、商店の破壊や略奪をさせ日系の進出企業に甚大な被害を出せば、日本政府はまた何時ものように叩頭腰折れ外交に転ずると踏んでいたのではないかと思うのである。ところが、今度ばかりは国内の強硬論に押され、自民党の強硬論に押されて、民主党も中国の言いなりにばかりにはなれなかった。そこを読み違えた中国は、一旦始めた強硬路線を終息させる国内向けの大義と、タイミングを逸してしまったではないかと思う。
 日本国内では最近、日中関係の悪化が日本経済の立ち直りに大きなマイナスである、と言った論調が目に付く。中国が数日前に発表した直近の貿易収支は、全体ではプラスながら対日貿易は1割以上の減少であると言う。つまり、中国は日本との貿易が減っても痛くも痒くもないが、日本は痛手であろうと言っている訳である。しかし鵜呑みは禁物である。中国の貿易統計など、政府が幾らでも鉛筆を嘗められるのだから、頭から信用してはそれこそ中国の思う壺である。
 確かに対中貿易の落ち込みは日本経済にある程度の影響はあろう。しかし、その落ち込みは単に日中関係の悪化が理由な訳ではなく、中国の対欧米輸出の落ち込みがもっと大きく影響している筈である。欧米経済の停滞の方が余程インパクトが大きいのだから、何でも日中関係悪化に結びつけて悲観する必要はない。むしろ日中貿易の減少は、日本よりも中国の方がよりダメージが大きいという見方もある。例外的に、自動車の様に日本製品が露骨にボイコットされればそれはダメージがあろう。しかし一般の商品は、中国人は利発だからそう簡単に日本製品だからボイコットすると言う事にはなるまい。一方、中国の対日輸出は廉価品が中心だから、中国が輸出を絞るのなら多少のタイムラグはあるけれども、何れは第三国での調達が可能な製品が大多数である。むしろ、中国が必要とする自国で生産できないハイテク部品やコンポーネントの輸入が滞るダメージの方が、日本の企業の対中貿易減少のダメージよりも大きいと言う訳である。
 そうは言っても目先の影響は避けられないが、それには日本の企業にも責任の一半があると思う。1997年に始まったアジアの通貨危機をきっかけに、日本企業は猫も杓子も海外投資は中国一辺倒になってしまった。勿論、中国の国内市場の大きさも魅力であったのは事実だが、中国で製造した物をまた日本に引っ張ってくる加工貿易の基地までもが中国一辺倒であった事には言い訳はない。しかも当時はインフラが未整備で、決して投資環境が他国に抜きん出ていたと言う事でもなかった。しかし、それも通貨危機の直後は仕方がなかったが、2000年頃からは東南アジアも落ち着いて来たから、その頃から僕は中国一辺倒はリスクが大きすぎると言い続けて来た。中国人は賢いから、想像以上のペースで力を付ける、そうなるとコストが安いという生産基地としてのメリットが遠からず失せる事になる。そうなるかどうかは勿論定かではないが、少なくとも10年先を考えてリスク分散を考えて置くべきであると、当時ジャカルタで会う人ごとに力説したものである。しかし残念ながら、僕が力説した企業は結局例外なく中国へ行ってしまった。そのツケが今来ている訳である。そしてここ2年位、つまり日中関係が悪化する前から中国のコスト上昇を嫌気して、慌ててインドネシアを初めとする東南アジアへの投資を見直しているのである。
 と言う具合で、日中関係の悪化が日本経済の足を一層引っ張ると言う単純な論調には、うっかり耳を貸さない方が良い。親中派が、日本人を不安にさせる為に流布している情報が少なからず混じっていると見た方が良い。しかも、日本企業のダメージよりも中国経済のダメージの方が大きいとなれば、我慢比べの部分もある。とにかく中国は何事も信用できないから、迂闊に喜んだり悲観したりせずに常に冷静に対応する必要がある。