baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 ベネズエラの音楽教室運動

 昨日の事だが、トイレの弁が壊れてしまい、弁の交換作業をしていたら誤って弁を止める蓋をトイレのタンクの中に落としてしまった。瀬戸物の外箱と中側のプラスチックタンクとの間の、狭い隙間に落ちてしまったのでどうにも拾えない。中側のプラスチックタンクを外せないかメーカーに問い合わせたら、無理なので新しい蓋を買うしかないと言う。弁は消耗品なので比較的近所の、メーカーの特約工務店に置いてあったが蓋は壊れるものではないので何処にも在庫がない。この蓋がないと水を流せないので、不注意を後悔したが後の祭り、酷く不便をしている。消費税込で僅か105円の蓋一つに泣かされている。それでも特約店の親切な女性が奮闘してくれて、明日には入荷する手筈を整えてくれたのであと半日の辛抱である。
 我が家は普段はテレビは殆ど見ないのだが、昨日はニュースを見たまま点け放しになっていた。そうしたらベネズエラエル・システマと言う音楽教室の番組をやっていた。一昨日のシモン・ボリバル弦楽四重奏団の奏者たちもこのエル・システマの卒業生達だったので、余りのタイミングの良さに吃驚した。演奏会とテレビ番組の順序が逆であったら、恐らく気にも留めなかったのではないかと思う。このエル・システマと言うのは、1975年にホセ・アントニオ・アウレウという音楽に精通した経済学博士が提唱してベネズエラで始まった音楽教室である。貧困家庭の子供を、オーケストラや合唱を通して他人と交流させ、非行に走らぬ様に育てて行くと言う運動で、今は世界30ヵ国以上に展開しているそうである。楽器に触った事のない子供たちに無償で楽器を提供し、子供達が自ら協調性や規律を学びながら、目標に積極的に取り組んで行く姿勢を育んでいくことによって、希望や誇りを持つことを目的にしている、とある。今や世界的な指揮者となったグスターボ・ドゥダメルもこの音楽教室の卒業生であるそうだ。
 昨日のテレビ番組にも、元々家出をしてギャング組織の一員として悪い事ばかりしていた、弱冠21歳の若者が今はこの教室の教師として登場していた。爽やかなハンサムボーイで、笑顔の可愛い、とても以前はギャングの一員だったとは思えない好青年である。自分が非行に走っていたから、貧困家庭出身の元非行少年達が、非行から足を洗って一生懸命楽器の練習をしているその気持ちが良く分かるのだと言っていた。一昨日の弦楽四重奏団の名前に使われている「シモン・ボリバル」も、ベネズエラエル・システマ活動を管理している財団の名前であったのだ。日本には今年の4月に福島県相馬市で活動を開始し、専門家の派遣や楽器の購入、修繕などの支援活動を始めたそうである。ベネズエラの貧困は半端ではなく想像に絶する凄まじさだから、幾ら被災地とはいえ何だか立場が逆のような気がしないでもない。
 テレビ番組では、エル・システマの日常の活動や極貧家庭の実態を紹介しながら、グスターボ・ドゥダメルが2000人のオーケストラを振ると言う大イベントへ向けて、個々の家庭の事情や内面の問題を克服しながら練習に励む数人の若者たちの姿を追っているのだが、両親の離婚でずっと会えなかった父親に演奏会がきっかけで再会したり、何事にも自信が持てなかった少女がオーケストラを通じて周囲の友達に助けられながら自信を取り戻すなど、創作ではなかろうが見るからにやらせのストーリーなのであった。ところが最近は歳とともに涙腺のバルブが故障していて、お涙頂戴が分かっているのに不覚にも涙がこぼれてしまった。こちらのバルブは交換が利かないから、困ったものである。情けなくも、日本男児落第のこの頃である。