baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 凄惨な結末となったアルジェの人質事件

 アルジェリアイスラム過激派による人質事件は、何とも凄惨な結末となってしまった。行方が分からなかったJGCの邦人社員10名のうち、7名の遺体が確認されたと言う。せめて残る3名の中に生存者がいる事を祈るのみである。今回の事件はジャーナリストが紛争地で取材中に犠牲になるのとは異なり、本来紛争がない筈の地域で武装集団に襲撃されたのだから、犠牲者には気の毒で言葉がない。しかもテロリスト側は、意識的に外国人を人質に狙った事は明らかである。外国人でなければアルジェリア政府に対する圧力にならないし、世界の耳目を集めるにせよ、身代金を要求するにせよ、外国人の方が有効だとの判断であろう。
 一方、こういう事件は犠牲者の側は気を付けようがない。自衛の方法がない。全く以て不条理極まりない話である。そもそも丸腰の人間が武装集団に襲われれば、自衛の方法などあろう筈もない。しかも戦争でもないのに無防備な一般人を急襲し、拘束して人間の盾にしてしまうのだから許し難い卑劣な行為である。これに対し、アルジェリア軍は最も強硬な手段でテロリストを殲滅したようである。例えば人質を乗せて車で逃走を試みたテロリストを、ヘリコプターから車ごと攻撃したと言う。人質が拘束されていた施設に立て籠もる武装集団と軍との間で、猛烈な銃撃戦が交わされたと言う。これでは人質の生命は全く無視された事になる。日本では想像も出来ない乱暴な対応だが、テロリストを殲滅する為には多少の犠牲は已むを得ないという考え方は、少なくとも外国では十分あり得る。現に今回のアルジェリア政府の決断を、フランス政府は適切な判断であったと肯定していると言う。日本の常識と肉食狩猟民族の常識とは、時としてかなりの乖離がある。
 現地の状況が全く分からないし、アルジェリア政府は一切テロリストとは交渉しないとしていたらしいが、テレビの報道によれば、真偽の程に疑義はあるとしても、軍の責任者とテロリストが無線で交信したりはしていたらしい。そんな中でどんな切迫した事態に陥ったのかが僕には分からないので、アルジェリア政府の対応を一方的に責める積りはない。間違いなく、テロリストが一方的に無法なのである。が、やはりアルジェリア政府の行動は、余りにも乱暴に思えてならない。人質の命よりもテロリストに対する見せしめと、断固逃亡を阻止する意思の表れなのだろうが、無辜の人質が気の毒でならない。
 アルジェリア政府の発表では、外国人人質の犠牲者は8ヶ国37名だと言うから、これらの数字が事実なら大変な犠牲者の数である。テロリストが何人いたのか分からないけれど、本当に大惨事になってしまった。これだけ多数の犠牲者を出してでも殲滅する価値がある程テロリストが大勢いたのであろうか。或いは、これらの犠牲者の大部分はテロリストによって殺害されたのであろうか。結局は真実は闇に葬られてしまうのであろう。
 現役時代にはJGCとも仕事をしたし、僕自身も海外生活が長く、時には日本では経験できないような事もあったので何となく他人事とは思えない。改めてテロに強い憤りを感じるのである。と同時に、日本を含む西側諸国がイスラム教とイスラム過激派を混同して、イスラム教を単なる偏見によって迫害する事が起きない様に願う。