baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 円高是正と円安

 民主党の命運が尽きてから、突然円の下落と株価の上昇が始まった。安倍政権は未だ何も実績がないから、今の処単に市場が円売り、株買いをしているだけの、実態のないムード市況と言える。ところが今まで散々日本の円高の恩恵を被って来たドイツを筆頭に、特に欧州が日本は円安に誘導していると非難し始めた。これは幾ら何でも聊か厚かましい。
 僕は対ドル90円程度で円安だとは思っていない。ここでも最近僕が気に入らないメディアの無神経な用語が、日本の足を引っ張っている。安易に円安と言う言葉を使わずに円高是正と言えば、未だ随分ニュアンスが変わる。去年と比較すれば勿論相対的に円安である事は間違いないが、本来の円の実力から言えば到底円安と言えるレベルではないのである。僕は従前より現在の日本経済の実力から見れば、円は対ドル95円前後が適正であるとの持論である。もとより経済学者ではないから確たる理屈はないけれど、当面は95円が適正水準と言う事は数年前から言い続けている。その意味で今ようやく異常な円高が是正され、適正水準に戻りつつある丈なのである。
 この3年間の民主党円高に対する無策、特に安住淳の無能ぶりは際立っていた。安住に到っては為替介入を発動するレートを公表したのだから、その無能ぶりはここに極まれりであった。そこで市場は安心して円投機に走り、企業は先の見えない円高に悲鳴を上げて益々海外へ逃避した。この3年間の日本企業の海外投資総額は国内投資の3倍に上り、2010年の日本企業の海外資産はGDPの52%にも上ると言う話を聞いた事があるが、数字の信憑性はともかく、その潮流に乗って優秀な頭脳は海外に流出し、国内では未だに就職難が続いている。今まで本ブログに何度も書いて来た国内産業の空洞化、そんな負のスパイラルが今やっと断ち切られるかも知れない。
 勿論ハイパーインフレのリスクは裏表である。しかし従来の円高と国内産業の空洞化が是認できる訳もない。取り敢えず世間が何と言おうとアベノミクスは良い方向に動き出したと言える。やっと円の価値が実力通りの水準で評価され始め、不当に安かった企業の時価総額も適正な価格に近付きつつあるだけなのである。今までの3年間が酷過ぎただけで、今やっと円が適正な水準に戻しているに過ぎないのだから、諸外国にとやかく言われる筋はない。ただ安倍政権の具体的な経済政策が動き出した後に、それを市場が如何評価するかは未だ全くの未知数である。ハイパーインフレは困るし、市場が現在の反動で逆振れするのも困るから、これからが安倍政権の本当のお手並み拝見となる。