baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 大学生のモラルと女子柔道の醜聞

 予定通り今日は大学へ、下見と道順を確かめる事を兼ねて挨拶に行って来た。最近何となく薄々と察してはいたのだが、担当教授の話を聞いて不安が現実になった。
 僕の大学時代は決して誉められた学生ではなく、講義をサボッてヴァイオリンばかり弾いていたから、何時も成績は赤点ギリギリであった。就職試験の面接では、当時の副社長に「君は随分成績が悪いね」と言われ、こりゃダメかと思った程である。それでも講義中には他人に迷惑を掛けるような振る舞いはしなかったし、興味のある講義には万難を排して出席し、一字一句も聞き漏らすまいと神経を集中したものである。ところが、大学のレベルの問題もあるから一概には言えないのかも知れないが、最近の学生相手には勉強をしたい者が聞いてくれれば良いという講義スタイルでは通らないらしい。私語は厳しく注意しないと、放っておくと教室中に蔓延すると言う。また他人の迷惑になるから中座は認めてはいけない、なるべく学生を前に座らせる、などと言われると何だか中学生の授業を受け持つのかと言う気分になる。勿論一部の学生は熱心らしいが、なるべく双方向コミュニケーションを取って緊張を切らさない様にする工夫が必要だとの事、文科省の指導要領にも昨今はその事がしつこく謳ってあるらしい。
 教務課の人に案内されて教室の下見もした。200人以上入る階段教室である。マイクやOHP、レーザーポインターなどの機器は充実している。備え付けのパソコンは少し古そうで、自分の出張用を持ち込まないとダメかも知れない。何れにしてもこれ程大きな教室だと、学生一人一人を糸で繋ぎ止めておくのは無理そうである。オーケストラの指揮をした時でも、エキストラを入れても精々60-70人であったから、増してや現役を退いた今では100人を超える、しかも余りモチベーションの高くない人間を纏める事など不可能である。一体どうなる事やらと、少なからぬ不安を抱きながら家路に付いた。
 最近の子供たちのモラルや自主性の欠如を嘆かわしく思いながらテレビを付けたら、例の全日本女子柔道のセクハラのニュースが流れていた。僕はこの件では全く釈然としていない。凡そ全日本強化選手というセミプロでありながら、最後まで匿名で内部告発すると言うのが卑劣この上ない。正にブラックメールそのものではないか。アマチュアの高校柔道部ではあるまいし、言うなら堂々と言えば良いし、言えないのならさっさと止めれば良い。高い強化費用を出して貰いながら、何を考えているのかと言いたいのである。自分の主張に自信があるのなら、正々堂々と論陣を張るべきである。それをこそこそと陰口を叩くなど、スポーツマンの風上にも置けない。
 言うまでもなく暴力はいけない。しかし、竹刀で少々叩かれるぐらいが何であろう。その上、「お前らは家畜と一緒か」と発破を掛けられて、「人間としての尊厳を傷付けられた」などと言っていると聞くに及びもう開いた口が塞がらなかった。其処まで言わせる己の闘争心の欠如を棚に上げて、それこそ強化費用の浪費でしかないではないか。その程度の雑言に、いとも簡単に傷付く程度の尊厳しか持ち合わせていないのか。そんな選手が罷り通っている様では、日本の女子柔道には当分望みはあるまい。勿論実情を知っている訳ではないので単なる放言に過ぎないのだが、漏れ聞こえるニュースを聞く限りでは、どう贔屓目に見ても選手側が甘えているとしか思えないのである。もっともその根底には、指導者に対する信頼感の欠如、或いは指導者側の選手に対する愛情の欠如があると思える訳だが、これはもうお互いの人間性の問題である。情けない事に、心の痩せた人間が増えているのであろう。
 折から全日本で5連覇した女子バスケットボールのJX選手のインタビューがあったが、先輩の女子選手に「今日負けたら思い切りビンタを食わせる」と言われて頑張ったのだそうである。精神論ばかりでは旧日本軍の再来であまり建設的ではないが、他方で甘やかすばかりでは精神力薄弱になり特に格闘技で勝てる選手など育つ筈がない。強靭な精神が求められるのは何もスポーツに限った事ではない。猖獗の地でプラント建設に勤しみ、或いはメード・イン・ジャパンの普及に汗する人々にも心を馳せるが良い。
 中でもこういう問題が起きた時にやたらに元気が出て直ぐにしゃしゃり出て来る、僕が世の中で一番唾棄する『識者』と称する無責任でしたり顔の青瓢箪が、言いたい放題を言う風潮、それに何も言い返せない連盟幹部のだらしの無さにも辟易する。強化費用の使途に不明朗な点があったと言うから、所詮は目クソ鼻クソなのであろう。大学生の講義中のモラルの低さも、この柔道連盟の醜聞も、その根底に共通するのは、戦後日本の間違った教育が生み出した問題であるように思えてならない。