baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 信州飯田へツーリング

 今朝は何時になく早起きした。転居以来いつもパッとしなかった体調が、今朝は酷く具合が良い。外を見れば未だ5時過ぎだと言うのに、天気が頗る良い。これだけ条件が揃えば、出掛けるしかない。
 と言う訳で、今日は前々から行きたいと思っていた御池山のクレーターを見に行く事にした。久しぶりのソロ・ロングツーリングである。新聞を読みながらゆっくりコーヒーを飲み、朝食を摂ったので出発は6時半であった。中央高速を南諏訪までひたすら走り、南諏訪からは茅野経由国道152線で高遠へ向かう。途中でガスを入れたり休んだりしたが、高遠には9時前に着いていた。152号線はアスファルトが荒れていて、あちらこちらに割れ目や浮き石があり、逆バンクは当たり前の走り難い道になっていた。
 高遠で写真を撮ろうとして気が付いた。カメラにSDカードが入っていない。仕方がないから今日はスマホで写真を撮ろうと思い付いたら、スマホは充電したまま家に置き忘れて来ていた。この頃は以前の様に街道沿いに写真屋と言うものが見当たらないので一度は写真を諦めかけたが、念の為にコンビニに寄って見たら何のことはない、何でも売っているではないか。早速SDカードを購入してカメラに装着した。本当に便利な事である。
 高遠では何やら花祭りみたいな事の最中で、土日は交通規制が敷かれていた様だが、僕は一路飯田へ急ぐ。

  (未だ雪を冠ぶる南アルプス甲斐駒ケ岳方面を望む)

(途中「美和ダム」の近くを通ったが、水は落ちていなかった。こういうのがムダな箱物の典型なのか?)
 暫く走ると、中央構造線北川露頭という物があった。要はこの辺りはその昔、太平洋側の岩石と日本海側の岩石がぶつかって出来た断層で、その断層がそのまま四国、九州にまで続いていると言う事らしい。折角なのでバイクを道端に置いて見てきた。ヘルメットを脱ぐと、耳を聾するカジカの大合唱である。露頭沿いに小川が流れていて、カジカの鳴き声はそこから沸いてくるのである。露頭に下りると流石に周囲のカジカは黙ったが、遠くの方からは相変わらずけたたましい声が響き渡ってくる。肝心の露頭は、成る程地層が縦になっている。不思議な物である。そう言えば以前、福島原発の事故の後見に来た根尾谷断層もこの近くである。この辺りには日本の歪みが固まっているものか。

(右側の青いのが太平洋側の岩石、左側が日本海側の岩石だそうである)
 北川露頭を後にして、更に152号線を南下すると、直ぐに分杭峠と言う峠に差し掛かる。この分杭峠中央構造線上にあるのだが、磁場がゼロと言うパワースポットなのだそうである。そんな名所になって以来、一帯は一切駐車禁止にされていて、見ればお年寄りの団体がぞろぞろと歩いていたので僕はパスする事にした。更に走ると、地蔵峠と言う処に出る。ここも中央構造線上に位置するそうである。お地蔵様がぽつんと一体祀ってあると言うが、僕は見落とした。152号線はここで一旦途切れるので、ここから一路しらびそ峠を目指して横道へ入る。この一帯は本当に山の傾斜が急峻で、谷が文字通り切り立っている。日本の秘境と呼ぶのに相応しい厳しい土地である。

     (しらびそ峠から遙か南アルプスを望む)
 しらびそ峠には大きなロッジがあったが、僕は素通りして更に御池山へ急ぐ。しかしお目当ての御池山クレーターは、未だ見つかってから歴史が浅いからか、或いは素人には何が何だか分からないからか、特段目立つ標識も立っていない。肝心のクレーターは、道から見ただけでは本当に良く分からない。向かいの尾根がクレーターのへりだと言う説明で、とにかく大きな穴が開いている訳である。直径50mほどの隕石が衝突して直径900m程の穴が出来たらしい。そのクレーターの内側を巻くように道が走っているのだが、谷川を見下ろせば殆ど垂直に見える急峻さである。凄まじいエネルギーであった事だけは想像できるのだが、クレーターと言うイメージは遂に実感できなかった。

     (正面の尾根がクレーターの縁だそうである)

(こういう写真を見る方が分かり易いけれど、道からではとてもこういう穴には見えない)
 何だか曖昧な気分のまま御池山クレーターを後に、日本のチロルと言う触れ込みの下栗へむかった。道の駅から「天空の里ビューポイント」と名付けられた展望台までは徒歩20分の登り道と言う。折角だからと、道の駅にバイクを置いてビューポイントまで歩いてみた。道は人がすれ違えない程の狭い山道で、辿り着いた展望台も10人も人が集まれば満員になりそうな狭い場所であった。なるほど眼下に、急斜面に点在する民家が見える。しかしチロルの雄大さと牧歌的なほんわかさに比べると、残念ながらとてもチロルと呼べる代物ではない。自然の厳しさばかりが目立つ下栗の里である。

 帰路は下栗から地蔵峠の反対側の152号線に出て、そこから矢筈トンネルと言う出来立ての、何処までも直線でスピード感を喪失してしまうトンネルを抜け、256号線、県道18号線と乗り継いで高遠に戻り、そこから152号線、20号線を経由して南諏訪から帰って来た。小仏トンネルは相変わらずの大渋滞で、今日は大月から25kmの渋滞と表示されていた。それでも家には7時半には戻れた。総行程590km、13時間のソロ・ツーリングは久し振りに大満足のツーリングであった。