baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 バリ島で(2)

 バリでは相変わらず強風が吹き続けている。地元の人に言わせるとこの風は悪い風だそうで、月曜日から吹き始めたと言う事である。何だか僕が持ち込んだようだが、今日で既に5日目と言うことになる。僕は明日の午後帰国の途に付くのだが、僕がいなくなれば風も止むのかも知れない。同じ強風でもこちらの人には善悪があるらしく、今の風は当たると身体がチクチクするのだそうである。お陰でバリでは急に病人が増えていると言う。風がバリにしては結構冷たいので、風邪の類いであろう。身体がチクチクするのも、温度が低いからかも知れない。
 僕は別に身体はチクチクしないけれども、浜辺に出るのは億劫で今年は何時にも増して無精を決め込んでいる。僕は根が怠け者だから、一日中ボヤッとしていても飽きると言う事が無い。日本から持ち込んだ煎餅や落花生をつまみに、テラスで浜辺を眺めながらビールを飲んでいれば至福である。そのうちに眠くなって昼寝をして、目が覚めたらまたビールを飲んで、小原庄助ではないがバチが当たりそうな毎日を過ごしている。
 僕はもう20年以上も毎年バリに来ているが、ホテルは多少の変遷はあっても大体決まっている。ヌサ・ドゥアが賑やかになってからは基本的には何時もヌサ・ドゥアのホテルを使っている。ここ数年はより正確に言うと、ヌサ・ドゥアの北側に新たに開けたベノア地域のホテルを使っている。バリのもう一つの顔であるクタは、白人や若い人には人気だが僕には賑やか過ぎて落ち着かない。少し山の中に入ると、これも日本人には有名なウブッドがあり、ここも最近は開けて来て高級ホテルや高級レストランも進出しているし、わざわざヴィラを買う日本人もいるぐらいだから好きな人には良い場所なのであろうが、僕にはバリと海は切っても切れないので余り興味はない。サンゴ礁に囲まれたバリの碧い海が大好きなのである。
 しかし偶には別の場所を見物するのも良かろうと、昨日はタクシーを時間貸しで借りて少し出歩いて見た。交通渋滞は相当のものである。もう直ぐ飛行場からの高速道路が開通するようで、ヌサ・ドゥア方面から飛行場への便は良くなりそうであるが、僕がバイクを借りて走り回っていた頃とは隔世の感である。飛行場までの所要時間は恐らく当時の3-4倍であろう。今の交通事情ではとてもハーレーを借りて走ろうという気にはならない。
 ヌサ・ドゥアの南側に隣接し、比較的最近開発された場所にあるホテル・ニッコーは、日本人には有名だが僕は今迄一度も見た事もない。僕の友人がこのホテルに隣接してリッツ・カールトン・ホテルを今建設している事もあり、先ずホテル・ニッコーの見物に出掛けた。海沿いの崖に面して建てられているのでロビーは浜辺から10階くらいの高さのフロアにある。成る程人気があるだけに、眺望が良さそうなホテルである。ただ周囲には何もないから、食事はホテルの中で高価な観光料金のメニューを食べるか、タクシーを呼んで相当離れた繁華街に出るかしか選択肢はなさそうである。手前には地元資本が、50ヘクタール、つまり16万坪という広大な敷地に一千何百室かのホテルと、多数のヴィラを建てて開業したばかりであった。何処で調べたのか、ここの処僕のアドレスにこのホテルの広告がしつこく送られて来ていたのだが、実物を見て納得した。あのホテルを効率よく回転させるのは、並大抵の販売では無理であろうと納得した。件のリッツ・カールトンは年内に完成させると聞いていたが、素人目にはとても年内完成は無理に見えた。友人は定めし怒り狂って発破を掛けていることであろう。

     (ホテル・ニッコーのロビー階から海を臨む)
 そこからクタへ回った。クタへは本当に何年ぶりであろうか。テロ爆弾騒ぎの後には行っていないから、少なくとも前回から10年以上は経っている。旧い街なので道路は狭く、雑然としている。雑然とし過ぎている処へ新しいビルが建ったりしているので、少しバリの匂いが薄れている様な気がした。

     (今は一方通行になっているメインロード)

     (ハードロック・カフェとスタバが隣接しているクタ)
 浜辺にはマリンスポーツの教室が林立しており、若者が水着で道路を歩きまわっている。白人のバックパッカーが薄汚い恰好で徘徊している。観光客が物珍しそうに土産物屋を覗いている。道路沿いに立ち並んでいるカフェでは、観光客が冷たい飲み物を片手に道路を眺めている。昔ながらの、雑然とした、しかし何ともオープンなクタの光景は変わっていない。旧いマーケットも未だ残っていた。間口が1.5m位、奥行きが3m程度の店が何百軒と並んでいるのである。

 この旧マーケットの向かいのカフェで、ギンギンに冷えたビールを飲んで喉を潤してからホテルに戻った。夜は自分のホテルの近くで、久しぶりに肉料理を食べた。バリに来てからは毎晩、魚しか食べていなかったのである。このレストランはBumbu Bali、「バリの香り」と言う名の、スイス人のコックとバリ人の奥さんとでやっている有名な店で、何時も満員である。ほとんどが白人か日本人客である。余り流行るので二軒目の店を別の名前で直ぐ近所に開いたが、Bumbu Baliに入れなくて回された客がBumbu Baliでなければ厭だと言うクレームが相次ぎ、今は全く同じBumbu Baliと言う名前になっている。値段は多少高めだが、これも久しぶりにワインを飲みながら期待通りの料理に舌鼓を打った。