baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 中国のウィーグル人

 今日は知人に誘われて、外国人の昼食会に参加した。日本人男性は僕一人であったが、大人数の立食パーティーであった。会場には其処此処に人の輪が出来て、談笑に、食事に、余念がない。
 中に中央アジアの顔をした人がいたので、ウズベキスタントルクメニスタンに一時期足繁く通った僕は何となく郷愁を覚え、「貴男はウズベキスタンの出身ですか?」と話しかけた。ところが彼はウィーグル系中国人であった。今は同胞が政府に迫害されている訳だが、彼は首尾よく数年前に国を脱出して、今は家族共々日本に住んでいる。今回の北京の自爆テロでは、200人を超える同胞が拘束されたのだから心穏やかでいられる筈もなく、複雑な顔つきでウィーグル人である事を吐露した。そこで僕は日頃思っている同情を口にし、彼の本心を聞きたかったのだが、口は重く政府批判などは幾らこちらから持ちかけても一言も聞けなかった。
 その中に随分と顔つきの違う、どちらかと言えばパキスタン辺りの顔をした人間が彼の処へやって来た。以前からの知り合いの様である。二人は何やら訳の分からない言葉で話しだした。その新手に何処から来たのか尋ねてみると、彼もやはりウィーグル人であった。話しているのはウィーグル語なのだそうである。聞けば家では子供にもウィーグル語で話をすると言う。はっきりとは言わないけれども、ウィーグル人として生き、ウィーグル人としてのアイデンティティは堅持しようという意志と見て取れた。
 すると今度はまた中央アジアの顔つきの、色白の男が僕らに近付いて来た。彼とウィーグル人二人はお互いに知り合いではないらしい。僕はその色白の男に、何処から来たのか訊いたところ、トルクメンであると言う。トルクメンなどという独立国はないから、更に追及したらトルファンだと言い出した。やはり中国領ウィーグル自治区出身だったのだ。しかし直ぐに、これには深い訳があって、と延々と欲しくもない中国のパスポートを持っている事への言い訳が続きそうであった。要は三人とも、中国系ウィーグル人なのである。しかも三人で話す時には中国語は一切話さず、ウィーグル語で会話をしていた。
 同じ会場に所謂中国人も、気付いただけでも数人いた。彼等はウィーグル人とは話そうともしないし、存在すら気付かぬ振りである。お互いに誰が政府のスパイか分からないから、「触らぬ神に祟りなし」とばかりにウィーグル人には接触しないように避けているのは明白であった。またウィーグル人も、例え国籍は表面上は同じでも、漢族とは全く無縁であるような顔付であった。これが現在の中国系ウィーグル人の気持ちである。見ているだけで何とも気の毒で、別れ際には「頑張ってね」と、よくよく考えればこんな言い方では何を頑張るのか分からないのだが、それでも彼等、ウィーグル人は僕の意は150%理解して、朗らかに挨拶を返して来た。チベット系中国人も同じなのであろうが、祖国を喪失した人達の何と哀れな事か。改めて今世紀中頃にはウィーグルもチベットも、中国から分離独立出来る事を願わざるを得なかった。