baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 デング熱

 関東で、海外渡航経験のない学生が3人、デング熱を発症したと、ちょっとした騒ぎになっている。この3人に共通している、疑わしい感染源は東京の代々木公園で蚊に食われた事だと言う。それ程大騒ぎをする事でもあるまいが、当分は代々木公園で蚊に食われないようにした方が良さそうである。もっとも東京都は昨日、早速大掛かりな殺虫剤散布をしたようである。気の毒に、他の多数の昆虫が犠牲になってしまった事であろう。
 僕が駐在していた、バングラデシュインドネシア、は共にデング熱の盛んな地域であった。デング熱マラリアと同様、蚊が病原菌を媒介するので、患者から接触や空気を経由して感染する事は無い。地元では、マラリアの蚊は夜食う蚊であるのに対し、デング熱の蚊は昼間食う蚊であると言われている。インドネシアでは更に細かく、昼間の10時から夕方の4時の間に蚊に食われたら、デング熱の惧れがあると言われていた。また、デング熱を媒介する蚊は水の綺麗な処でしか繁殖できないので、澄んだ水溜りがある場所は気を付けろと日頃から聞かされていた。
 デング熱と普通の発熱との大きな違いは、デング熱の患者は血小板が急激に減少することだと言う。だから重症患者には血小板の輸血をする。患者の顔はニホンザルの様に真っ赤になってしまう。これも血小板が減少するからだと言われたが、そのメカニズムは良く分からない。とにかく体の節々が痛み、40℃位の高熱が3日も続き、顔が真っ赤になったらまず間違いなくデング熱である。潜伏期間は南方では3日と言われているが、実際にデング熱を発症した人間は3日前に水の綺麗な場所で蚊に食われている。特に都会ではゴルフ場が一番危なかった。
 普通に体力のある人なら、デング熱でいきなり死ぬことはない。しかし一度罹患すると抗体が出来、しかも抗体があっても二度でも三度でも感染するそうで、二度目以降の感染では、今度は抗体があるが為に却って重症になってしまうと言う。インドネシアでは3度目だと死亡率は50%を超える、と聞いた事もある。マラリアは一応予防薬もあるが、デング熱は予防薬も特効薬もない。その代わりと言ってはなんだが、エボラ熱の様に危険な病気ではないし、マラリヤの様に後遺症が残る厄介な病気でもない。代々木公園の蚊は遠からず駆除されて、デング熱騒ぎも直に収まるであろうけれど、海外に行く人はなるべく蚊に食われない様に気を付けるに越した事はない。僕はと言えば、都合20年近くもデング熱の地域で生活したけれども、殊デング熱に限って言えば、幸い他人の見舞いばかりで自分が見舞われた事はない。