baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 トランプ就任間近

 米国の次期大統領、ドナルド・トランプの就任まで残す処3日となった。大統領選挙戦中には罵詈雑言、実現性のない大衆迎合を目論んだ政策の宣伝が大半で、非現実的な彼の発言を聞いて彼がまさか当選すると思った人は、世界広しと雖も決して多くはあるまい。そのまさかが現実となってしまった。しかしそれでも、彼もビジネスで成功した男であるからには馬鹿ではあるまいし常識もあろう、しからば官僚やベテラン政治家の意見にも耳を貸し、願わくば選挙戦中とは打って変わって常識的、現実的な路線に転向するのではないか、といった希望的観測をした。
 ところが、残念ながら就任が近付くにつれ彼の暴言は勢いを増し、思い付きの政策や企業の経済活動への口先介入は留まる処を知らず、相も変わらず一方通行のツイッターで言いたい放題言い募っているようである。その間、たった一度だけ開かれた一時間の記者会見では、気に入らない質問は一方的且つ感情的に封じ込めるなど、凡そ民主主義をリードする国の元首とは程遠かった。しかもその品格は甚だしく卑猥ながら、プライドだけは超一流である。自分が歴史上最大の雇用を創出した男であると言った時に、こともあろうか「神が曾て創造した(God ever created)」と表現したのである。不遜極まりない、お世辞にも世界一の超大国のリーダーに相応しいとは言い難い人格を暴露した。そして最側近にはユダヤ教徒の娘婿を据えるなど、特に政治家にはご法度のネポティズムを率先して採用し、2030年には人口では米国最大の宗教勢力となると言われているイスラム教徒に敵対しようとしている訳である。
 更に彼は極め付きの勉強不足である。例えば、防衛費に関して日本はドイツ、韓国と同列にされて負担が少ないと非難されたが、日本は米国の駐留費用の7割強を負担しているのに対して、韓国は4割台、ドイツに到っては3割台に過ぎない。しかも米軍は日本に基地を持つ事により、南太平洋から南シナ海までの広い地域に睨みを効かせられる訳で、在日米軍の費用全てが日本防衛の為の費用という訳ではない。
 或いは、日本との貿易不均衡が槍玉に上げられたが、日本は物作りが強い。炭素繊維や自動車部品の様に米国の製造業に欠かせない製品が大量に輸出される反面、米国から輸入する物は農産物等限られた商品しかないので当然の事ながら日本からは輸出超過となる。しかし、米国は日本から購入した航空機部材を初めとする製品を組み込んだ完成品を大量に輸出しているのだから、日本と米国の間だけの輸出入の比較は全く意味をなさない。しかし勉強不足でそんな道理も分からないトランプである。
 斯くの如く、外国との微妙な話をそんな大雑把な認識で言い放つなど外交の常識では考えられない。しかも外交も不動産取引と同様の駆け引きの道具としか見ていないから、話しの次元が情けないほど低い。更に彼の言う政策は何れも思い付きばかりで、当然の事ながら具体策の説明がないので、実際には如何いう事になるのか誰にも見当も付かず、ただただ世界中が振り回されてしまう。
 とにかく品が悪くて、その悪口雑言はヤクザの喧嘩並み、政策は思い付きばかりで実現性に乏しく、極端な保護主義に加え人種差別や宗教差別なども顕著、米国ではいまだに就任反対デモが続き就任直前のギャロップ調査では新大統領に期待しない人が早くも過半数に達したと言う、超大国のリーダーどころか、凡そ民主国家のリーダーに望まれる資質とは正反対の人物である。他方でゴマ摺りはかなり効果があるようで、米国の大企業からはトランプの口先介入に露骨に迎合する発言が相次ぐ。そんな、望まれない、下品極まりない人物が3日後に米国の大統領に就任する。大統領の暗殺と言う悲劇がまたまた繰り返されない事を祈るのみである。