baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 不対等な日米関係

 鳩山政権は衆院選挙に先駆けて、対等な日米関係を唱えていた。アジアでの友愛外交を標榜していた。それが、如何に世界に疎い島国の感覚であったかが如実になってしまった。
 日本の総理大臣がワシントンにまで出掛け、米国大統領に正式会談を要請したにも拘わらず拒否されたというのは前代未聞ではなかろうか。COP20の際にも正式会談を申し入れて拒否され、今回は辛うじて夕食会に先駆けて僅か10分だけ非公式な会談が認められた。それが11月の会談以来だと言うから、もはや日本は米国にとっては虫ケラ同様だと言われているに等しい。
 本当に米国が日米同盟を蔑にしようとしているとは僕は未だ思わないが、少なくとも鳩山総理に対しては侮辱的な仕返しをしているのは明らかである。これが対等な日米関係を唱え、米国々債の保有高が世界で二番目の日本の総理大臣に対する処遇である。オバマ大統領は、「トラスト・ミー」と言ってまんまと騙した日本の総理を当分許してはくれそうもない。馬鹿にされたのだから当たり前である。インド洋での給油という、日本にとっては絶妙の形で参加していたアフガン戦線からの離脱も影響なしとはしまい。そして現実は、幾ら対等な関係と唱えても相手にされなければこの体たらくというのが対米における日本の実力である。
 その10分間に話せた事といえば、相も変わらず普天間基地移設問題だったようだ。しかも鳩山由紀夫のことだから何一つ具体的な事は言わなかったというのは容易に想像がつく。会談後のホワイトハウスの発表では、日米首脳の非公式会談があった事が簡単に報道されただけで普天間については一言も言及されなかったそうだ。5ヶ月ぶりの日米首脳会談が日本の国内問題だけに終始したのだから、ホワイトハウスも論評のしようもなかろう。今年はその座を開け渡すとは言え、未だ世界第二位の経済大国である日本が日米首脳会談で普天間基地移設問題への理解を求め、恐らくは汲々と言い訳をしたのであろう。核安全保障サミットの会合に参加している唯一の被爆国でありながら核拡散防止についてはもとより、中国・インドの軍事力台頭とアジアの安全保障、北朝鮮を巡る6ヶ国協議早期再開、中国人民元の切り上げ、イランの核開発問題、等々話題は山ほどあるだろうに外交パートナーとしては全く相手にされなかった訳である。選挙屋集団民主党が国内にしか目が届かない間に、日本は江戸時代の島国に逆戻りしてしまったようである。
 今年に入って中国海軍の艦隊が日本の周辺海域で活発に活動をしているそうだ。当然何かの目的がある筈で、防衛省の専門家なら既に分かっている筈だが、中国の新鋭艦隊が沖縄列島を横行していると聞けば我々も余り良い心地はしない。東シナ海のガス田共同開発について鳩山が胡錦涛国家主席に迫っても、相手はのらりくらりと言質を与えずに相変わらず単独で開発を続けている。当面ガスを抜けるだけ中国単独で抜いてしまい、埋蔵量がいい加減少なくなったら共同開発に応じる魂胆であるのは分かっているが、日本は力がないから何も出来ない。日本側で同様の開発を始める根性も、それを援護する自衛力もない。中国海軍の活動は、東シナ海での実力誇示と、更には沖ノ鳥島に対する日本の領有権主張にたいする抗議であろう。中国は以前から沖の鳥島は単なる岩礁であって島ではないと、日本の領有権主張に反対している。これが友愛外交に対する隣国の反応の現実である。
 民主党が政権を奪取してからかれこれ7ヶ月になる。この間、政治とカネの問題では多くの有権者が失望した事であろう。代表と幹事長が揃いもそろって政治資金規正法違反を犯し、相続税脱税を図ったのである。幹事長の収賄疑惑も、証拠不十分なのかも知れないが限りなく怪しい。しかしこれ等は政策ミスではないから別次元の問題として、やはり最大の失政は普天間基地移設問題と郵政官営化であろう。
 普天間基地移設問題では、上述の如く最早アメリカにも蔑まれ日米関係に信じ難いまでの亀裂を作ってしまった。のみならず、世界の外交舞台からも疎外されてしまった。鳩山は如何なる着地点を考えているのか分からないが、5月末までの決着は普天間基地の現状維持を別にすれば段々現実味が薄れてきていると思う。福島瑞穂は相も変わらず恥知らずにもガム・テニアンへの移設を唱えているが、抑止力の維持の為には2,400kmも離れた場所では全く意味が無い事が分かっていない。ヘリコプターなら6時間以上も掛ってしまい、且つ戦闘地域に入る前に給油も必要となる。無責任なのか単なる愚かなのか或いは売国奴なのか、何れにしても検討にも値しない事を言い続けている。どうしてこんな無責任な社会主義者と連立を組んだのか確とは分からないが、どうやら民主党は政権を作るに当たり安定的な権力が欲しかっただけで政策には無頓着であったようだ。
 郵政官営化は日本の経済浮揚にボディーブローで効いてくるであろう。民間に流れない膨大な金を政府保証の下に集めても経済活性化には全く繋がらない。日本郵政グループに民間に資金を流すノーハウが無い事は、亀井静香自らが告白しているところだ。そして地域に密着して中小企業や個人商店を支援する中小金融機関を圧迫し、一層民間への金の流れを閉塞させる。公平な競争が阻害されるから、金融、保険業界全体へのネガティヴ・インパクトも大きいし、ただでさえ魅力の乏しい日本市場から外資が更に遠のいてしまう。日本経済にとっては何一つ良い事はない。しかも金利情勢が変われば、主に国債で運用されている郵便貯金事業から膨大な赤字が発生して、大掛かりな財政出動が必要となるリスクも孕んでいる。また税金が無駄遣いされるかも知れないと言う事だ。ただ急激に問題が顕在化する訳ではないので一般には関連が分かり難く始末が悪い。
 僅か7ヶ月でここまで滅茶苦茶にされてしまったので最早一朝一夕に諸々の問題全てを一挙に正規の軌道に戻す事は無理だが、せめて日米関係の正常化と世界における日本のプレゼンスの維持を最優先で心掛けて欲しい。本当は経済復興や財政再建、年金再構築、税制改革、など日本の将来の為に一刻も早く手を付けなければならない問題は山積しているのだが、今の政権には手に余るのは分かっている。それどころか、下手に手を付けられれば滅茶苦茶に輪が掛る。しかし、世界における日本の地位とその為の良好な日米関係の維持は、一旦崩壊してしまえばもう簡単に元には戻らないだけに何としても最低限死守して欲しいものである。