baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 COP16閉幕

 メキシコのカンクンと言う妙な名前の場所で行われていたCOP16が、結局まともな結論が出ないまま閉幕となった。インドネシア語では空心菜の事をカンクンと言うので、どうも妙に聞こえてしまうのだが、他意はない。相も変わらずエゴを貫く米国と、何とか責任を逃れようと先進国にのみ義務を押し付けようとする中国やインドを中心とする新興国間の溝が埋まらない。更に、先進国でもEUのように未だ余裕のある地域と日本の様にもう乾いた雑巾を更に絞るしかない国とでも足並みが揃わない。このままでは京都議定書が2012年に切れた後の、2013年以降がどうなるか見通しが立たない訳である。
 しかし、今やCO2排出では米国を抜いて世界一と言われる中国と、ついこの間まで1位の座を守っていた米国という、CO2排出の二大々国が我関せずでは、所詮今以上の効果は殆ど期待出来ない。米国と中国の二ヶ国だけで世界の温暖化ガス排出の41%を占めると言う上に、中国は今後も更に排出量が増えると予測されるのである。一方で1997年の京都議定書を締結した環境意識の高い先進国は、全部寄せ集めても全体の27%にしかならない。この数字を見るだけで、中国と米国抜きでは最早これ以上議論を進めても実効が期待出来ない事は一目瞭然である。
 一方、優等生の様な顔をしているEUにも実は裏がある。EU旧ソ連圏の、温暖化ガス垂れ流しだった東欧圏を抱えている。ここを改善すれば全体では未だかなりの改善余地がある。実際、旧ソ連圏の旧式な工場は西側では競争力が無くて閉鎖されたりしているのである。だからEUは、旧ソ連が崩壊した1990年基準で削減目標を言う時には、実は相当な余裕があるのである。そんな事とはツユ知らず、信じられない程無知な当時の日本の宰相は昨年、同様に1990年比で2020年迄に25%削減などと何の根拠もなくブチ上げた訳である。
 しかもEUは温暖化ガスの排出権取引を逸早く導入して、域内で市場を立ち上げた。ところが日本は相当遅れており、やっと導入の議論を始めたばかりである。そのEUは、一方では未だ削減余力があり、他方でこの排出権取引市場を更に成熟させたいと言う思惑があり、京都議定書の延長という選択肢に日本も同調するよう圧力を掛けて来た。しかし日本はEUとは全く事情が異なり、既に世界最高水準の削減を実施している上に更に今以上の排出削減をするには莫大なコストが掛る。今後は一般家庭も相当なコスト負担の覚悟をしなければならないのだが、未だその議論も尽くされていない。斯かる背景の下ではこれ以上異なる土俵での議論を続けるべきではない。
 今回COP16が大きな成果を上げられずに閉会したのは非常に残念であるが、日本が脂肪の塊にならずに、海外からその頑なさを非難されても節を曲げなかったのは良しとしたい。温暖化ガス排出に限らずゴミの分別収拾、レアアースの再生、家電製品のリサイクルなど、日本は国民一丸となって、既に地球環境に対しては世界一の規制を実施している。他方、米国のように世界最高の豊かさを享受しながら、或いは中国のように世界最大のGDPを誇りながら、温暖化ガス排出削減の責任を取らない国がある。将来の子孫に美しい地球を残す為に、引き続きEUやカナダなどと共に日本がリーダーとなり地球温暖化防止の努力は続けなければならないが、一人だけ無意味な貧乏くじを引く事のないように、これからも毅然とした交渉を続けて欲しい。そして何よりも、外交努力を通じて米国と、中国、インド、ブラジルなどの新興国を同じ土俵に引き入れる事が当面最も重要である。