baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 今度はロシアでまたテロ

 モスクワのドモジェドボ国際空港で、また爆弾テロが起きた。手荷物検査を受けずに入いれる国際線の到着ロビーで爆弾が爆発し、少なくとも31人が死亡、40名が重体、そして100名を超す負傷者が出た。犠牲者の数は未だ増えるかも知れない。英仏独を含む8人の外国人旅行者も犠牲になった。無辜の一般人を狙った卑劣なテロである。
 そしてテロの背後にはまたイスラム過激派が見え隠れする。昔はテロやゲリラと言えば共産党だったのだが、今はイスラム過激派がすっかりお株を奪ってしまった。またイスラム教がテロリストと混同されたり、或いはイスラム教が暴力的な宗教だと一方的な誤解を強めそうで、何とも困った事件だと思っている。
 イスラム教の預言者ムハンマドが突然神の啓示を受けたのはメッカであった。当時、メッカではユダヤ教が勢力を張っていた。ところがムハンマドの口を衝いて出る言葉が人々を惹きつけ、瞬く間に一大勢力になってしまった。初めは大した事もなかろうと高を括っていたユダヤ教やメッカの為政者も、ムハンマド一派の急激な勢力拡大に脅威を感じ、ムハンマドの暗殺を企てる。それを事前に察知したムハンマドは信徒と共に夜陰に乗じてメディナへ逃げる。それで暫くは平穏であったのだが、メディナムハンマドを慕う人数が更に拡大し、細かい話は忘れたが、ついにはメッカの軍がメディナまで攻めて来てムハンマド一派と戦争になる。
 ムハンマドは当初は戦に敗れ、一族郎党が皆殺しになりそうな処まで追い詰められた。その時にムハンマドが発した言葉は過激である。一族郎党皆が生きるか死ぬかの瀬戸際に、自分達の存続を守るための聖戦と称して、過激な檄を飛ばした。そして、この聖戦で命を失った者は必ず神が天国でその代償を用意して呉れると鼓舞する。その効果があってか最後はムハンマド側がメッカ軍を打ち負かして、ムハンマドは30年ぶり位にメッカに凱旋するのである。要するに、イスラム教徒の聖戦は全滅するかどうかの瀬戸際の戦いを指し、聖戦で死んだ者は天国で神に救われるのである。しかし、本来それは滅亡するかどうかの最後の戦でなければならない。そして、ムハンマドの戦いは受け身のこの一戦のみであり、他に自分から戦を仕掛けた事は一度もない。
 翻って今の世界を見てみると、具合の悪い事にイスラム教が他文化、他宗教に痛めつけられている。パレスチナが然り、欧州のイスラム教徒が然り、そして今般のロシアのイスラム教徒も然りである。ロシアでは反政府ゲリラが活発なチェチェンを初めとし、その周辺共和国は人種もロシア人とは異なり、宗教もイスラム教である。そして、地元の利権は皆中央のロシア政府に抑えられ、地元民は仕事もなく極めて貧しい。イスラム教徒は出稼ぎに出てもロクな仕事が貰えない。言ってみれば地元民は何れはロシアに抹殺されて、土地だけ略奪されそうな雲行きに思える。そんな不満と将来に対する不安が一般人に蔓延している処に、誰かが原理主義と言う、本来イスラム教とは別のものなのだが、過激な思想を吹き込み聖戦を焚き付けると、仕事もなく不満の鬱積した若者、或いはロシア軍に家族を虐殺されたり凌辱された人間、などがテロリストになってしまう。
 しかもイスラム教の人達は、国よりも教義が大切であるから、国境を越えて団結する事はいとも容易い。祖国に拘る一般の西欧人には理解出来ない団結力を発揮する。扇動する側は、ここぞとばかりに聖戦の折にムハンマドが発した過激な言葉を吹き込む。確かにこの時期のムハンマドの言葉は、それ以外の時とは別物のように、極めて好戦的で過激なのである。そして、過激派がそこだけ拾って援用しても決してクル・アンの捏造にはならない。ムハンマドにしてみれば、自分達が生きるか死ぬかも分からないうちから愛と平和は語れないから、これは已むを得ない。
 テロは卑劣で許せないのは僕も同じ思いだが、こういう背景があるから、力だけでイスラム過激派のテロを抑えるのは酷く難しい。しかもイスラム教徒の歴史は中世の十字軍の残虐行為にまで遡る。西洋のキリスト教徒が甲冑に身を固め、弓矢しか武器のなかったムスリムの地を攻めムスリムの兵士を虐殺した。城壁の中には虐殺された味方の生首が投石機で投擲され、城壁が破られれば街中の住民は赤子まで皆殺しにされた。看目麗しい若い女だけは侍女にされ、それ以外の辛うじて生き残った者は老若男女、子供までも奴隷にして売り払われ、残された金銀財宝は悉く略奪された。そんな、鬼のように恐れられた十字軍である。日頃の生活の不満や故郷が滅亡する不安に駆られ、扇動者に洗脳されて誤った教義を信じ、10世紀も前の白人の残虐行為に想いを致して聖戦に赴くのである。
 怪しからんのは、純真な、或いは傷心の若者達を扇動する真のテロリスト共である。このテロ実行犯のマスターマインドたちは徹底的に排除しなければいけない。彼等が誤った聖戦を仕掛けてくるなら、反テロの国々は一致団結して受けて立ち、これを徹底的に殲滅しなければならないのは議論の余地がない。しかし同時にテロリスト実行犯の供給源となっている、社会的な背景を改善しない限り、この戦は何時までも終わらないであろう。その為には、先ず西側諸国がイスラム教を正しく理解する事から始める必要がある。そして故のない差別をしている事を自覚する必要がある。更には、イスラエルのテロと侵略にも同様の厳罰を加えるべきで、決して看過してはならない。