baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 TPP交渉加盟議論に思う

 TPP交渉加盟についての結論を野田佳彦は一日延ばした。慎重なのか優柔不断なのか分からないが、交渉参加の結論は揺らがないで欲しい。GDPに占める割合が僅か5%の農業に配慮するあまり、国益を見失う事だけは避けて欲しい。農業については、別途支援策を議論すれば良い。医療やサービス業に到っては、為にする反対であって確たる根拠もない、単なる理由のない不安、革新を嫌う保守主義に過ぎない。
 それにしても思うのは、ここ数週間のTPP議論で明らかになった諸々の事である。結局のところ反対派の主流は山田正彦を急先鋒とする農業族議員である。しかし、現実には日本が農業国であるという認識を持っている人は先ずおるまい。実際、日本は農業だけでは成り立たない、むしろ工業国である。勿論、食は国の安全保障にも密接な関係を持っているから、ただ単純に市場原理だけに任せる訳には行かない。しかし米の780%の輸入関税は別としても、食の輸入に高関税をかけて食を守るという事は、言い換えれば消費者の財布から日本の農業に膨大な支援金を払っていると言う事である。一面的な所感ではあるが、非農業従事者から見ればこんな不公平もない。
 そしてもう一つの反対派は反米、親中国の左派議員達である。こちらは極めて危険な集団であり、日本の将来の為にも要注意である。小沢一郎鳩山由紀夫に象徴される反米思想が、TPPへの交渉参加にブレーキを掛けているのが最近徐々に明確になって来ている。反米即ち親中国の輩達である。日本人として、これだけ日本を挑発し侮蔑している中国に擦り寄る議員達の神経が理解できない。日本の国体を根幹から解体しようとしている共産党社民党ならいざ知らず、民主党にもそういう議員がいるのである。
 農業について言えば、GDPでは僅か5%とは言え地方自治体によっては農業しか産業のない所もあるであろう。そういう地域では、TPP加盟がどういう影響を及ぼすか具体的には分からないままに、非常な不安に苛まれるでろう。しかし、10年と言う時間が与えられる。その10年間で、何時までも消費者に甘えてコストの高い農業を続ける現状を何としても改革して貰わねばならない。土地の集約、農業機械のシェア、不効率なJAの見直し、等々改善しなければならない事は多々ある筈である。他方、国としても安全保障の観点から日本の農業に何らかのテコ入れをする事は当然必要であろう。だから悲観ばかりする必要はない。改善に努力をして貰う事と並行して、国としての支援は必ず為されるであろう。勿論高関税だとか輸入制限、或いは戸別補償と言った、最後は消費者にツケの回る直接的な支援やバラ捲きではなく、日本の農業を世界に伍して行ける産業に脱皮させる為の支援でなければならないが。
 僕が心底許せないのは、山田正彦を筆頭にTPP交渉加盟を潰す為に詭弁を弄している議員達である。自民党も例外ではない。時期尚早と言う反論は、一見議論が熟していないと冷静な事を言っているようで、実は単なる時間稼ぎに過ぎないのである。ところが交渉事は参加するタイミングを逸すれば未来永劫もうチャンスは訪れない。しかも、菅直人が唐突ながらもTPP交渉加盟を言い出してから既に1年以上経過している。大震災があり原発事故があった事はこの期間を割り引く理由にはなるが、それにしても丸1年もの間何の議論もなく放置されたのは、紛れもなく議員達の怠慢である。議論が熟していないという非難は、己の怠慢に向けられるべきなのである。
 また、政府の説明が不足していると言うが、交渉に参加もしていないのだから交渉の内容は正確には分からない。米国は数ヶ月前に、参加するかどうかの意思表示もしていない国に、交渉内容は開示できないと明確にメッセージを送って来ている。つまり、日本政府も国民に説明出来る程の内容についての知識はないと理解すべきである。それを分かっていて、国民に対する説明が足りないと言う国会議員の詭弁は許されざるものである。 
 TPPについての議論は、先ず参加する事を前提に交渉に参加して、交渉内容を十分把握して国民に説明すると共に、これから日本の国益を交渉に反映させて行く事が肝要である。交渉のテーブルにも付かぬまま、TPPの着地点も分からぬままにああだこうだと悲観論に明け暮れて、交渉で自国の立場を有利にする努力を最初から放棄する事は、中長期的には決して日本の為にはならない。