baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 イスラエル総選挙

 22日に投開票のあったイスラエル総選挙で、下馬評とは裏腹に右派が意外に票を集められなかった。特に僕が危惧していたのは、極右の「我が家イスラエル」が下馬評では相当議席を増やしそうであった事である。パレスティナが折角国連で138対9の圧倒的多数で準国家として認められたのに、その反動で右翼が人気を得てイスラエルの領土拡張が益々酷くなると言う事への危惧であった。ところが蓋を開けて見ればこの極右政党が占めた議席数は僅かに11議席、全部で120議席だから1割にも満たなかった訳である。同様に強硬派のネタニヤフ率いるリクード我が家イスラエルを併せても、改選前の42議席から31議席に減ったと言う。国連での138対9と言う一方的な投票結果は、英国、フランス、日本など米国とのアライアンスを組む主要国がこぞって賛成し、反対したのはイスラエルと米国他の少数しかいなかったが故である。これは現実を見据えた、公平な結果であったと思う。
 総選挙に当たっては、イスラエルの国民に未だ自制心があったものと見える。昨今のヨルダン川西岸の領土拡大やパレスティナ侵攻と残虐な武力行使を見ていて、イスラエルはいよいよ追い詰められたと感じ、それだけに極右が勢力を伸ばす事は予想に難くなく、僕は一層のイスラエルの暴虐を恐れていたのである。ところが実態は、極右の議席減に伴い議席を増やしたのは中道派であると言う。中道派はパレスティナとの和平交渉再開を主張している穏健派である。強硬派のネタニヤフが首相である限りは予断は許さないが、パレスティナに和平が訪れるチャンスとなるかも知れない。僕は元々イスラエルの建国には無理があったと思うのだが、しかし一旦国を承認したからには問答無用で国を取り消すのは酷である。従い1968年の国境線までイスラエルが撤退し、その国境のなかで活動するのは已むを得ないことだと思う。しかし国土が狭いからと、周辺を武力編入しようとする事に根本的な無理がある。人口僅か7百万人、人口密度は日本と同じなのだから満足を知るべきである。
 大体イスラエルの極右が唱えるパレスティナは我が領土、と言うのは日本で言えば天照大神か八岐大蛇の時代の神話に立っている。旧約聖書の創世記である。ユダヤ人にとっての唯一の拠り所は、自分たちこそがその時代にユダヤ教の神から選ばれた民族であり、我が民族こそが神に選ばれた選民なのだという一方的な優越論である。しかし当時のユダヤ人はそもそも現在のイスラエルユダヤ人とは人種が異なると言われている。現在のイスラエルの主流人種は東ヨーロッパ出身の白人である。ところが、当時のユダヤ人は別にそういう人種があった訳ではなく単にユダヤ教を信奉していた人達であるが、人種的にはパレスティナ人と変わらなかった。だからパレスティナ人と同類のイスラエル人が選民と威張るなら未だ分かるのだが、今は白人が威張っているのだからそもそも理屈に合わない。しかも神から選ばれたと言いながらも、その地位は当時は寄留者(ゲーリーム)と言う、基本的には余所から流れ込んできた民族と位置付けられたいたのである。こんな事からも明らかな様に、今のイスラエルが拠って立つ理屈は実際には殆どこじつけなのである。
 ユダヤ人にすらイスラエルの建国は時期尚早であったと言う人がいるぐらい強引に過ぎたイスラエル建国であった訳だが、既に世界中から移住してきたイスラエル人がいるのだから今更取り消す訳には行かない。しかし、一方的な理屈と、米国の議会を牛耳っていると言う慢心と、圧倒的な武力で領土を拡張するのを看過する訳にはゆかない。続投するネタニヤフは相変わらず和平の癌であるが、願わくば、今回の総選挙の結果で何とか和平の話し合いが再開されて彼の地に平和が訪れ、イェルサレムが世界中の人間が自由に、安全に訪れる事の出来る共通の聖地になる事を願いたい。