baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 ラフレシア

 連日の猛暑にへばっている。東京の最低気温が今日は28℃であったというから、気が狂いそうになるのも無理はない。そんな熱暑の中、東大付属小石川植物園ラフレシアの花が開きかけているというニュースがあった。世界最大の、直径3mにもなる花で、インドネシアではボゴール植物園で栽培されている。元々はスマトラ原生の花と言う。もっとも東大ではラフレシアと言わずにスマトラオオコンニャクだとかショクダイオオコンニャクだとか呼ぶので、何だか気が抜けてしまう。ラフレシアと言うとなんとも優雅な花を連想するが、何とかオオコンニャクと言われると、幻の花に纏わるロマンティックな響きが少しも無い。
 ラフレシアの花は滅多に見られない。先ず花自体が絶滅寸前で、数が少ない。そして開花するのは3年に一度、開花は1日〜2日だけ、しかも開花は夜なので朝見ないと午後には萎れていたりする。僕はインドネシア滞在中にスマトラに遊びに行った折に、ラフレシアを見たいと地元の若者をガイドに雇って山に入った事がある。今咲いているというから半信半疑で従いて行く事およそ30分、道なき急峻の山道を、下草を掻き分けて、大汗を掻きながら喘ぎ喘ぎ登って行く。すると突然若者が、これがラフレシアだと植物の芽を指差した。そんな事を言われても俄かに信じ難い。怪訝な顔をしていたら、もっと上れば別のラフレシアがあると言うが、どうも怪しいのでそれ以上進むのは止めにした。99%騙されたものと思うが、地元の若者がお金に出来る程珍しい花なのである。
 或る時、ジャカルタで今晩開花というニュースを聞き、翌日の午後仕事の合間にボゴールまで走った。場所は知っていたので迷わず直行したが、残念ながらもう花はつぼまっており花芯が曲がってしまっていた。それでも高さは優に3m程あった。地元のインドネシアでも沢山の見物客が集まっていた。開花は見られなかったが、その代わり悪臭は嗅がなくてすんだ。
 ラフレシアの花は肉の腐ったような悪臭で昆虫を誘い込み捕食すると現地では聞かされていた。実際臭いは酷いようだが、捕食するというのは事実ではなく、昆虫は開花中に腐臭に誘われ花に付くと、花の底に落ちてしまい脱出出来なくなるらしいが、花が萎むと花粉を沢山身体に付けて他の花へ飛んでゆくという事である。太古の昔は昆虫に受粉を助けて貰う程、ラフレシアの花が沢山あったと言う事であろうか。
 小石川植物園のオオコンニャクはどうであろう。未だ今の処は開花していないようである。大きさも3mには大分及ばないようである。興味津々ではあるが、この暑さではちょっと出掛ける気にならない。