baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 集団的自衛権行使と対テロ戦争

 安倍政権の安全保障関連法案については国民の過半が支持しておらず、政府の説明不足などといった批判が多く、また憲法学者と称する法律の専門家には、集団的自衛権行使は憲法違反であるといった声の方が多いらしい。僕は法律や憲法の専門家ではないので、集団的自衛権行使が合憲か違憲かなどという筋論の議論に参加する資格はないが、露骨な中国の領土拡張行動が顕著な昨今、法律論争はさておき自国が自力では守れず米国の軍事力に頼らざるを得ない日本の現状では、集団的自衛権は否応なしに発動できる様にしておく必要があると思っている。元々戦後の日本にはインテリ左翼が跋扈しており、反戦憲法九条擁護といった議論が知的遊戯の範疇を出ない、ある意味では高等遊民とも言える階層の人間が無責任な発言をする風潮があるので、この手の話題では世論調査などは常に偏向してしまう。一言でいえば、日本は限りなく平和なのである。
 しかし、今般の一連の関連法案が国会を通過し、集団的自衛権の行使が現実となった場合に僕が一番恐れるのは対テロ戦争に無条件に巻き込まれてしまう事である。対テロ戦争とは、言い方を変えれば、今であればISに代表される新興過激派イスラム勢力との戦いである。と言うのは、米国が世界最悪のテロ国家であるイスラエルを現在の様に無条件に擁護し−別の言い方をすれば、米国政界が現在の様にユダヤ人に牛耳られていて−、国連で過半の国がイスラエルに制裁を課す決議を支持しても常任安保理国の特権で米国が潰してしまい、結果としてイスラエルパレスチナ住民への残虐無比な暴力行為が続く限りは、非力なパレスチナ住民側に立つ人間、それはISに限らず過激であれ穏健であれ、にとっては米国は常にイスラエルと同等の許されざる国家という位置付けをされる事になる。従い、イスラム過激派のテロ対象となる事は当然である。9.11事件も含め、その行為の是非は別として、米国が蒙るテロ攻撃は結局は米国の自業自得なのである。その米国が日本の守護神であり、最も集団的自衛権行使の対象に成り易い事に僕は多大な危惧を抱くのである。
 ISを含むイスラム過激派は、一つにはイスラエルパレスチナでの無慈悲な領土拡大に憤り、一つにはエジプト、サウジアラビア、シリア、その他諸々のイスラム国家の現在の統治体制に不満を持つイスラム教徒の精神的な拠り所であるに過ぎない。全てのテロリストが何れかの組織に属している、或いは組織の指示に従って動いている訳ではない。ただその行動に共通しているのは反米であり、イスラム国家の反体制運動なのである。
 僕はテロ行為には断固反対であるし、テロ行為自体がイスラム教の教えに反していると考えている事は、既に何度も本ブログに書いている。聖戦と安易に叫ばれるが、イスラム教でいう聖戦とは極めて特殊な状況下でのみ認められる例外的な戦いであって、イスラム過激派が日常口にする様な事態では聖戦はあり得ないとも思っている。つまり僕はイスラム過激派を擁護する気は全くない。増してや奴隷制の復活だの、異教徒の大量虐殺だのは到底受け入れ難く、感情的にはイスラム過激派は断固殲滅すべきであると思っている。
 しかし、集団的自衛権の名の下に、同盟国である米国との共闘を目的に、対テロ戦争に日本が巻き込まれる事は、とりもなおさずイスラエルという世界最凶のテロ国家を間接的にせよ支援する事になり、またイスラム国家の政治改革運動に、無条件に首を突っ込む事になる。これは絶対に避けなければならない。例えばシリアのアサド政権は如何考えても狂っている。サウジアラビアの統治も、富と権力が王族に偏り過ぎていて、このまま何時までも現体制が維持されるとは到底思われない。イスラエルは直ちに違法な入植地を返還する事は勿論、国連決議に基づく国境線まで撤退し、パレスチナ地区の実質武力統治や非人道的な経済制裁を止めるべきである。そして何よりも日本は、中東地区のこういった微妙な政治問題には絶対に首を突っ込んではならないのである。