baiksajaの日記

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 インドネシアの最新ニュース

 日本では相も変わらず、尖閣諸島の接続水域にまた中国の監視船2隻が現れた、これに対し仙石官房長官が中国に外交ルートを通じて抗議した、などとレベルの低い駆け引きが続いている一方で、中国はアセアンでの地盤強化に余念がない。アセアンにいてもこの頃は日本の陰が極めて薄いのが情けない。外交音痴の民主政権には新たな外交政策など望むべくもないが、それにしても中国が着々と地歩を固めているのに日本は余りにも無策で嘆かわしい。
 今日からインドネシアのユドヨノ大統領が上海を2日間の予定で訪問する。上海では400余人の中国経済界の大物との会議も予定されており、中国からのインドネシアへの更なる投資が期待されている。そしてインドネシアの国内市場の中国製品に対する一層の開放も議論される。したたかな中国は抜け目なくインドネシアマーケットの席巻を狙っている。翻って考えるに、インドネシアの大統領が最後に日本に来たのは何時であったか。少なくとも民主党が政権を取ってからは一度も来訪がないと思う。アセアンの中でも一番日本との関係が近いインドネシアですらこの有様である。今の日本の政権はインドネシアからもさえ見放されていると言って良かろう。
 日本では環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)への参画が急に脚光を浴び始めた。しかし与党内にも小沢一郎を初めとする農業擁護派が根強く、TPPへの参画に反対している。日本がFTAを中々締結できないのも国内の農業問題があるからである。日本はEU、韓国、インドネシア、インドなどとのFTA締結を目指している。これに反して例えばEUは、日本の国内農業問題が解決しない限り、これ以上話し合っても埒が明かないと、話し合いの中断を申し入れて来た程である。しかし、この問題は日本が自由経済を標榜する限り、避けては通れない。そして日本が自由経済の原則に立つなら、日本だけ国内農業保護を唱える訳には行かない。かと言って、農家の個別補償などという姑息な手段では、何ら問題の解決にはならない。そもそも農家の個別補償などは小沢一郎一流の選挙での票集めに過ぎないのである。
 僕は農業は、今や望むと望まざるとに拘わらず、世界との競合に立ち向かわなければならないと思っている。政府の保護には、財源の問題を引き合いに出すまでもなく、限界がある。肝心な事は農業の保護や農家へのバラ撒きではなく、世界の農産物に伍して競合し得る新しい国内農業の形態を設計し、一刻も早く政策面からその具体化を急がなければならないと言う事だと思う。単に農業を庇うが為に、日本の貿易全体の足を引っ張るような事をこれ以上許してはならないと思うのだ。そして、新しい農業形態の実現に向けて政府主導の農業改革を行う事と並行して、FTAEPA、TPPを積極的に推進して自由な貿易を実現しなければならない。さもなければ日本の経済は本当に疲弊してしまい、国民の高齢化と相俟って、日本は遅かれ早かれ没落せざるを得なくなると危惧するのである。
 話題変わって、インドネシアでは、出国の度に税金を払う独特の制度が今日まで続いている。アセアン諸国間ではお互いに人的交流を増やす為、ビサは廃止し観光促進の条約も締結しているので、インドネシアの海外渡航を制限するが如きこの制度はアセアン内の他国からの批判の的であった。しかしインドネシア政府は頑ななまでにこの制度を守ってきた。その理由の一つは脱税である。インドネシアでは海外渡航が可能な富裕層にも税金を払っていない国民が多数いたので、せめて出国の際位は税金を取り立てようという政策であったのだ。
 しかし昨年より国民皆納税の掛け声の下、全ての国民に納税カードを持たせる運動が始まった。この運動の開始に伴い、出国税もそれ以前の約1万円から2万5千円に引き上げられた。その代わり、納税カードを保有している国民には出国税は免除され、納税カードを保有しない国民にのみ出国税が課せられる事となった。この為と言う事ではなかろうが、昨年一年間に納税カード保有者が劇的に増えたそうである。そこで出国税も来年の正月1日から廃止される事になった。インドネシアも海外渡航に関しては、やっと先進国に列せられることになったのである。先ずはめでたい。
 因みに、出国税の廃止に伴う来年からの税の減収は凡そ4億円と言う。所得税が免除されている低所得家庭の人間がそれだけ頻繁に海外渡航している訳で、インドネシアの徴税の実態が推測出来よう。他方、インドネシアの富裕層には毎週末シンガポールなど海外で過ごす人が少なくないので、出国税の値上げに伴いこの人たちが納税カードを保有するようになった事は十分にあり得る。名目だけとは言え所得税を払う方が得だと思う人が増えたとすれば、それらの人々が税務署と同じ土俵に乗った訳で、大変結構な事である。