baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 インドネシアは連日のデモ

 久しぶりに来たジャカルタは連日のデモだそうである。このデモは実はジャカルタに留まらず現在国中に飛び火しているようだ。背景は、センチュリー銀行という小ぶりの銀行に対する中銀からの6.7兆ルピアに上る巨額融資の実態解明を求めるデモである。この融資に現副大統領、当時の中銀総裁だったブディオノが絡んでおり、更に当時経済調整大臣兼財務大臣で現政権でも財務大臣を務めるスリ女史と大統領も関与しているとの憶測が飛んで事態が複雑になっている。大統領が選挙資金手当ての目的で中銀のブディオノにセンチュリー銀行への巨額の融資を不正に実行させ、この融資を監督する立場にあるスリ財務大臣も不正融資実行に加担している、という疑惑である。
 当然デモの裏には野党がいるに違いない。この国でデモを起こすのは極めて簡単で、僕にでも直ぐに出来る。日本円で数百円の日当にスナックとミネラルウォーターを人数分用意しておけば人は直ぐに集まるので、スローガンを教えて行列させれば良いだけである。しかしセンチュリー銀行への融資が大統領の選挙資金に流れているという疑惑、銀行の規模に比して融資金額が過大である事実、中銀総裁が副大統領に指名されスリ調整大臣も引き続き閣内に留まっている事、などから疑惑は強まるばかりである。そして大統領のこの件に対する発言がどこかの総理大臣の如く要領を得ずノラリクラリとしていたので国民は益々熱くなって来ている。大統領はついに昨日になり、政権を誹謗する政敵の陰謀とデモを攻撃し始めている。これに対しメディアは言論の自由を封ずるものと反発し、デモの主催者は9日の世界反汚職デーのデモに向けて一層の結束を呼びかけている。
 実際軍人上がりで強力なバックのいない現大統領の選挙資金捻出は誰の目にも簡単ではなかった。それが春の総選挙で大統領与党の民主党が第一党に躍り出て、続く大統領選挙でもブディオノ中銀総裁と組んで一度目の選挙で票の過半数を抑えてしまった。疑惑の根拠はそこにある。そして分不相応の多額の資金がセンチュリー銀行に流れたのが不自然なのは誰の目にも明らかで、そこに何らかの裏金が動いたと勘ぐるのは当地に慣れた人なら誰でもする事である。
 インドネシア汚職は文化であるから、どんなに頑張っても撲滅には最低100年は掛かると以前書いた(10月20日本ブログ)。しかし、小さな汚職は間違いなく市民生活の日常に大きなマイナスインパクトを与えているので、これは早期に撲滅する必要がある。別に大きな汚職なら良いと言っているのではないが、小さな汚職は根が浅いから取締りを強化すれば比較的簡単に撲滅できる反面、大きな汚職は根が深く国の制度から変えないと経済や政治が回らなくなる惧れがあるので簡単に手は付けられないという意味である。幸い国全体に反汚職の機運は高まってきていて、今回のデモと真相解明要求もキーワードは反汚職である。スハルト政権時代には考えられなかった、民主主義の進歩である。どんなに周りが騒いでもデモが続いても真相が解明されるとは到底思えないが、こういう運動の積み重ねで反汚職の意識が高まる事は結構な事だと思う。