baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 大丈夫か、日本航空

 御巣鷹山日航機大惨事が他人事ではない僕は、この季節になると毎年色々と思ってしまう。特に昨今のように299号線で上野村を頻繁に通り、慰霊の園御巣鷹山稜線登山口、などの標識を目の当たりにすれば尚の事忘れようがない。そんな事もあり、今年は山崎豊子の「沈まぬ太陽」を改めて読んだ。
 この小説の中で一貫しているテーマは、日航の安全対策と経営の利益追求の葛藤である。何処の運送会社でも乗客を運ぶ限りは、その安全対策には万全を期していると思うが、航空会社となれば事故での死亡率が桁違いに高いから、並大抵の事ではないと思う。しかし現実は、現在の日航が置かれている立場のように、無事故運航は当たり前だが、それに加えて国際競争には打ち勝たねばならず、且つ企業として利益も上げねばならない。この一見矛盾した命題を解決しなければならないのだから、航空会社の経営は並大抵な知識や経験では出来ないと思う。
 そんな日航の経営立て直しに、小沢一郎の盟友と言われる、高齢な稲森和夫が今年の正月早々に抜擢された。週3日の出勤と言うが、経歴はともかくその年齢、仕事の難易度などから本当に大丈夫かと訝しい。日本郵政の社長に推された斎藤次郎に次ぐ、民主党政権下での小沢一郎人事である。天下りにあれ程反対していた民主党日本郵政の社長に大蔵事務次官だった斎藤を推した時ほどの世間の反発はなかったが、僕は稲森和夫の週3日出勤では日航の再建は難しいのではないかと思っていた。その再建は最近やっと筋道がついたところで、実際の具体化はこれからなので批評は時期尚早だが、運航の安全を疎かにせずに世界のJALを再建して欲しいと心から願っている。無事に再建出来れば良いのだが、まかり間違ってまた大事故でも起こしてしまえば、小沢一郎の責任は重大であり、終生許される事はあるまい。日本を祖国とは思っていない節がある小沢にそこまでの覚悟は到底あるまいが、日本にとってはこの人事はそれ程重要な人事であると僕は思う。
 小説を読みなおすと、やはり利益追求と安全運航重視が常にぶつかり合ってストーリーが展開して行く。飽くまで小説の中での話ではあるが、取材がしっかりしている山崎豊子の小説であり、古くはインド、ロシア、マレーシアで、また日本では羽田沖や御巣鷹山で事故を起こしている事からも、あながちフィクションとは思えない迫真力がある。昨今の日航の置かれた立場を考えると、何とも薄ら寒い物を覚えてしまう。実際、最近の機内サービスは大分質が低下している。以前の過剰サービスであった部分が是正された事もあるが、「こんな事まで」と言うコスト削減も目に付く。
 乗客の目に付く処ですら徹底的なコスト削減が為されているとすれば、整備や部品交換などは適切になされているであろうか。小説の中にあるように、緊急を要さない部品交換や整備を先延ばしにしたり、無理な人員削減で整備時間を必要以上に削減して整備の質を落としているとか、運航クルーに過度の勤務を要求しているような事はないであろうか。御巣鷹山のような事故は二度と起こしてはならないが、余程の不運が幾つも重なるという偶然以外は、事故には必ず人為的ミスという要素も含まれる。この人為的ミスだけは繰り返して欲しくないのである。
 そんな思いを抱いていた今日、仙台で双発の日航機がエンジンからの出火で、片肺で緊急着陸したというニュースがあった。事故機の機材は乗客160人程度の中型機で、低燃費が売りの、今後の日航再建で期待されるMD-90である。事故原因の究明はこれからの運輸省の調査を待たねばならないが、再建を急ぐ余りに、更には銀行からのプレッシャーに屈して、安全面での配慮を犠牲にする事だけは絶対に避け、世界のJALのプライドと安全性を維持して欲しいものである。