baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 東北地方の高速無料化

 東北地方や北関東の高速道路の無料化に伴ない、中大型車が悪用していると思われるので8月末には本制度の終了を検討せざるを得ない、と大畠章宏国交相が記者会見で語ったと言う。要するに直接被災地に関係のない通過トラックが、一旦被災地で高速を下りて、再度最寄の入り口から高速に乗って高速代を浮かす手口を悪用と言っているらしい。東日本高速道路会社の調査によれば、この制度が始まって4週間後には、対象地域を通行する中大型車の70%の車両が無料化の対象車であったと言う。また普通車の無料化に必要な罹災・被災証明書の発行枚数は353万枚に上ったそうである。更に、一部区間の抽出調査では、対象高速道路の交通量が3割〜6割増え、もよりの一般道の料金所付近の交通渋滞を招いているという。
 この結果から明らかな事は当初から予想された通り、被災地への物資の運搬であろうとなかろうと、中大型車は出来る限りこの制度を利用すべく多少遠回りをしてでも高速代を節約していると思われる事である。乗客を乗せた長距離バスまでこの手口で高速代を浮かすとも思えないから、トラックに限って言えば殆ど全ての車両が無料化対象となっているのではなかろうか。一方で、普通車の無料化に必要な証明書発行枚数はどう考えても多すぎる。青森県岩手県宮城県福島県4件の総人口は凡そ705万なのだが、被災地は太平洋沿岸部に限られている。これに栃木県、茨城県の一部も対象地域に加わるとは言え、老若男女の全員が運転をする訳ではないし、誰が考えても353万枚は多すぎる。こちらは制度の悪用を目論んで、不正に証明書を取得している不逞の輩がいると思われる。ただ、今回の国交相の発言の対象は中大型車のようである。
 目の敵にされた運送会社にしてみれば、制度の目的からは逸脱しているとは言え、別に違法行為をしている訳ではない。燃料代は高騰しているし、輸送費は値切られるばかりだから、少しでも経費を節約しようとするのは当然の企業努力である。そんなところに、こんなに杜撰な話が降って湧けば利用しない方がおかしい。偏に制度がザルなだけである。逆に、こういう利用のされ方を、本当に事前に全く想定していなかったとすれば、民主党の愚かさは想像を絶すると言える。僕は、この二年間に色々な業界団体を自民党から強引に引き剥がして来た民主党だから、全日本トラック協会とも癒着が出来て、敢えてやっているものだと思っていた。
 僕はこのブログで、こういう遣り方には反対である、北海道や日本海側の東北、場合によっては北陸からも、例えば東京に物を運ぶのに被災地経由とすれば無料になってしまう、こんなおかしな話は無いと書いた。これは誰でもすぐに思い付く事である。また普通車に限って言えば、本当に被災した人達には車を失った人も多い筈だ、同じ税金を使うならもっと直接的な効果が見込める方法がある筈だと批判した。素人の僕ですら、すぐに気付くレベルの話である。
 ムダを削減すれば16兆円の財源が出てくると言って見たり、元グラビアアイドルと現幹事長を主役に据えたバラエティショーの様な事業仕分けでは100年に一度の災害対策の為にスーパー堤防を作るのは無駄だと断じて予算を削ったり、一方で財源も確保できぬまま高速道無料化を推進したり子供手当てを新たにバラ撒いたり、とにかく民主党政権のやる事は、方や有権者受けを狙ったバカの標本のような事ばかりだが、行き詰まるまでは、或いは誤りであった事が明らかになるまでは、本人達が一向に気付かないのが情けない。傍目には初めから無理だ、誤りだ、と分かっているのに、とにかく強引に実行に移してみてからやっと気付くのが民主党なのである。本件も、その典型である。他方の、日本をダメにする危険な政策については、今日の処は措いて置こう。
 そもそも東北・北関東被災者支援の為の高速道路無料化は、結局は破綻してしまった高速道路無料化という民主党マニフェストでの公約をすっかり反故にしない為の苦肉の策だと思うが、始めて2ヶ月にもならないのにやはり破綻が明らかになってしまった。同じ税金を投入するなら、もっと直接的に復興に資する使い方は幾らでもある筈である。民主党が与党の面子に拘ったが為に、またまた無駄な税金が使われてしまった。だからと言って、違法でない限りトラック運送業者を責めるのは筋違いである。菅政権、民主党が己の不明を恥じるべきである。そして8月末になってしまう事は仕方がないとして、早く悪法は廃止し、元々足りない財源なのだから少しでも税金の無駄遣いは避けるべきである。これこそが本来の仕分けであろう。