baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 空心菜

 僕は空心菜が大好物である。元々は日本には無かったと思うのだが、東南アジアでは普通にある。インドネシアではカンクンと言い、一束10円位で売っている。これを炒めた物がカンクン・ゴレンとかカンクン・チャーとか呼ばれる。チャーは中国語由来で、炒飯の炒である。タイでも極く普通の惣菜で、名前は見れば分かるのだが、何処となくカンクンを連想させる名前であったと記憶する。それがこの頃日本でも出回り始めた。ビタミンやミネラルが豊富な健康食品だという触れ込みである。因みに手元の空心菜の袋の能書きを見ると、カルシウムはほうれん草の2倍、ビタミンAは人参より多く、ビタミンCはレモンより多く、ビタミンEはパセリより多いとある。これが日本では一束200円ぐらいもするのだが、一束の量がインドネシアの半分か三分の一ぐらいだから、大雑把に言うとインドネシアの40倍も50倍もすることになる。
 左様にインドネシアでは非常に安いのだが、インドネシア産は茎が少し硬くて筋っぽい。だからインドネシア人が料理する時は根元の方は捨てて、途中から使うのだが、それでも茎は包丁で縦割りにして細くする。牛肉と一緒に炒めたりもする。ところが日本で売られている空心菜は茎が柔らかいので縦割りにする必要は全く無い。これを適当な長さに切って、ニンニクを炒めた油に他の材料、例えばシイタケだとか干しエビだとか、何とでも合うので適当なあり合わせを放り込んで、オイスターソースで味付けをする。これが頗る旨い。これを白ご飯と一緒に食べれば、ご飯は幾らでも入ってしまう。
 更に嬉しい事には、この頃空心菜の芽も売られている。かいわれの類である。これも柔らかくて頗る旨い。野菜炒めに混ぜれば、なんとも言えぬふくよかな香りがして全体の味が引き立つ。さっと湯掻いてラーメンの具にしても良い。芽ならばおひたしでも行けると思うが、未だやった事は無い。こんな野菜が出回り始めて、また食卓が豊かになる。
 TPPに加盟してそのうちに関税が撤廃されても、こんな安い野菜を船賃を掛けて輸入する人はおるまい。しかも冷蔵輸送したら、恐らくは日本品よりも高くなってしまい、且つ鮮度も国産には適うまい。なんでもかでもTPPに加盟したら国産品がダメになる、と保守的な人は二言目には反対を唱えるが、冷静に考えればそんなに簡単に国産品がダメになる道理はない。何れにしても良い物が妥当な値段で口に入り、食卓が豊かになる事は大いに結構である。