baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

インドネシア近況

実は15日からインドネシアに来ている。先週はジャカルタに所用があり、それを済ませて週末から年に一度のバリ休暇でバリにいる。明日はイスラム教の犠牲際である。ヒンズー教徒が主流のバリでも、少し郊外に出ると小さいながらも牛や山羊の市場が立っている。隣接するジャワ島などからイスラム教徒が移住して来ているからである。
ジャカルタでは、MRTの工事が順調に進んでいる。目抜き通りに沿ってジャカルタ中心部をを南北に縦断する、インドネシア初の都市交通システムは政治的思惑や汚職疑惑が絡んで、構想から工事開始迄に四半世紀もの時間が掛かり、紆余曲折を経て昨年やっと日本の融資と技術で工事が始まったものである。当初は目抜き通りの交通渋滞が益々酷くなると危惧されたが、日本の建設技術とジャカルタ市の巧みな交通行政が合い俟って、交通渋滞はむしろ以前よりも緩和した様にも思える。そのMRT工事の地下鉄部分の工事が昨日、大統領の立会いの下に始まったと言う。取り敢えず一台目のトンネル掘削機が昨日動き始めたそうである。来月には現在組み立て中の二台目の掘削機も投入される予定である。何事も予定通りには進まないインドネシアでも、日系企業の手に掛かるMRTは予定通り2018年に開通するであろう、そして日本が作るのだから乗っても安全であろうと言うのが大衆一般の期待である。裏を返せば、もし中国が作るMRTなら怖くて乗れないと言う事なのである。先日結論が先延ばしされたジャカルターバンドンの新幹線にしても、僕の会った人は異口同音に、中国に決まらなくて良かった、中国が作る事になったら乗る人はいなくなる、と言っている。事程左様に一般人の間では、日本と中国に対する信頼感が異なるのである。
本ブログに以前から何度か登場している汚職撲滅委員会(KPK)の職権を制限しようと言う法案が国会に提出されたらしい。KPKは汚職に関わる捜査から起訴までの全ての権限を与えられた大統領直轄の独立機関として2002年に設立された。その威光には文字通り泣く子も黙り、官公庁でも国営企業でも幹部は誰でも脛に傷があるから、KPKを怖れて誰も決済しなくなり、国家予算の消化も遅れがちと言う弊害はあったが、汚職なしでは何事も動かないインドネシアでは汚職に関係の無い庶民は、KPKの誰をも恐れぬ徹底した汚職追求に快哉を叫んでいたものである。そのKPKから捜査権と起訴権限を取り上げてそれぞれ警察と検察に権限を戻す、と言う法案だと言う。やはり日頃からKPKが怖い政治家が警察と結託しているのは明白である。
公務員や政治家に限らず、警察も検察も裁判所も汚職まみれで、正義や法の執行など望むべくもないインドネシアであるから、KPKが上からは疎まれ下からは拍手喝采を浴びるのも当然であった。そのKPKに逆風が吹き始めたのは、2013年に警察の大物を摘発してからである。日頃からKPKを目の上の瘤と欝陶しく思っていた警察は、ここぞとばかりにKPKに対する反攻を始めた。KPK幹部の不正を暴き、事件に仕立て上げ始めたのである。理由は女性問題であったり職権乱用であったり色々だが、報復の色合いが濃い事は否めない。これに対しKPKも益々警察幹部の汚職を厳しく追求し、ついには今年に入り警察軍の総司令官を起訴するに及び大統領が割って入る事態にまで発展した。確かに警察の汚職体質は上から下まで目を覆う酷さだが、「水清きに魚住まず」の伝統文化を撲滅するには100年は掛かると言うのが日頃の僕の持論なので、KPKも余り功を急げばしっぺ返しを受けるのは前から予想される事ではあった。個人的にはKPKの職権は従来通りであるべきだと思う。KPKを骨抜きにしてしまえば、折角の反汚職の動きに水を注されてしまう。