baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 COP15

 COP15が予想通り揉めている。CO₂排出は誰でも地球の為には少ないに越したことはないと分かってはいるが、いざ自分はとなると高いコストを払って且つ不便な生活を強いられるのは嫌なので、一番最後に仲間外れにされない程度に渋々、と言うのが相場である。しかも新興国にしてみればこれから経済発展しようという時に、既に十分発展している日米欧と同じ基準で論じられたら叶わない、という訳だがその理屈にも一理ある。
 そんな、総論は結構だが各論には縛られたくない各国の中で、日本が最初に突出した目標を9月の国連総会で首相自らが公言してしまった。勿論余裕があるなら結構な目標だし、本当は世界中がそうならなければならない良い子の見本である。しかし現実は各国が自国の経済発展と負担の軽減を目論んで、エゴを丸出しにして相手を攻め立てる国際会議である。中国に至っては自分に向けられる矛先をかわすのに言うに事欠いて、先進国の資金援助がまるで足りないと開き直っている。今や世界最大の外貨準備国がである。もちろん日本のコミットにも主要排出国の足並みがそろう事という条件を付けてはいるが、そんなものは付け足しみたいなもので最後になれば誰にも認めて貰えないのは国際交渉の常識である(9月22日本ブログ)。事実、この条件は国内で構想が発表された翌日に産業界から総スカンを食って慌てて付け足した条件である。
 鳩山首相の言わんとするところは、本件に限って言えば僕も総論賛成である。しかし交渉事には相手とタイミングというものがある。幾ら理想が高くても、交渉ではそれが相手に受け容れられるとは限らないし、自分が高い理想を掲げれば他も従いてくるだろうなどという甘い考えは島国育ちの日本人ぐらいしか持ち合わせていない。案の定、各国とも日本のイニシアティヴは高く評価すると口では言いながら誰も従いて来ない。欧州が計算の範囲内で上手に積極性を演技している程度である。そして今日、中国などの開き直りを文字通り受け取ったのか、はたまた国内でどうも舵取りが上手く行かないので海外で点を稼ごうと思ったのか、日本一国で今後4年間で1兆7千億円の資金拠出をする事を環境相COP15の場で発表した。勿論各国は大喝采である。何故なら、この金額は総必要資金の40%にも相当する額なのだそうだ。また馬鹿な日本が一歩踏み出した、もっと行けもっと行け、とほくそ笑んでいるのが目に見えるようだ。
 勝負事でも交渉事でも共通していることだが、切り札には切るタイミングというものがある。早すぎれば無駄になってしまうし、遅過ぎれば勿論遅きに失する訳である。国内でこれだけ歳入が落ち込み、ガソリンの暫定税を据え置くかマニフェスト通り廃止するかと民主党鳩山首相が揉めているぐらいなのに、これだけの金を拠出するのなら上手に最大限に効果を高めて出して欲しいというのは納税者共通の願いであろう。しかし外交音痴の民主政権の交渉は、まるで小学生並みではないか。今のままでは予想通り各国におだてられて拍手喝采を浴び、首相は手応えがあったなどと鳩山イニシアティヴにご機嫌かも知れないが、未だその道筋も、その為に僕らが負担するコストも示してもらっていないそのツケは、今後の日本経済に重くのしかかり国際社会で日本独り負けの構図になりそうで気が気ではない。