baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 見放されていた包丁が蘇る

 半年前に、日本橋の老舗の刃物屋に見放された、20年来の付き合いの包丁、どうしても捨てるのは忍びなく、紙やすりで磨いて日本刀に使う椿油を塗っておいたら見事に黒錆になり、しかも錆びていた部分も未だ未だしっかりしていて、店で言われたように簡単に折れるとも思えない。かと言って今更また刃物屋に持ち込むのは業腹なので、自分で柄を付けてみる事にした。
 東急ハンズに先ず木を買いに行った。当初は元々の柄に使われていた黒壇のような木を使う心算であったが、非常に固い木なので加工が難しいと言われ、勧められて朴の木にした。考えて見れば和包丁の柄には、こんな白木の柄が多いから決して不似合いではない。僕には柄を両側からかしめられないので、色々考えた挙句に組みボルトを使う事にした。ところが店にはぴったりの長さの物がない。一瞬途方に暮れたが、あれやこれやと試してみた末に、短い組みボルトと延長ボルトの組み合わせで解決出来た。
 組みボルトはファイルなどに使われる、両側からネジで締めるボルトである。だから胴体部分が結構太い。そのボルトが通る穴を包丁の柄の部分の鋼に開けるのが一苦労であった。僕は電動工具を持っておらず、全て手動工具である。つまり手動ドリルで鋼に穴を開けたのだが、これは疲れた。それでも道具箱にあったビットは一応鉄にも対応すると書いてあるビットだったので、何とか穴は開いた。そこに朴の角材を当ててボルト穴を穿ち、ボルトの頭を埋め込む穴を彫刻刀の丸のみで削り、それをボルトでしっかり止めて、繰り小刀で外側から柄の形に削っていった。朴の木はそれ程固くないので、削るのはそれ程の苦ではない。そしてヤスリとサンドペーパーで磨き上げ、隙間にコーキング材を充填して、もう一度刃を研ぎ直して出来上がりである。持ち具合も中々手に馴染む。そして何よりも、切れ味が抜群なのである。

 自画自賛だが、立派に蘇ったように思う。こんなに大事にして使っている自分のところの包丁を、一顧だにせず見捨てた日本橋の老舗の刃物屋に文句を言いたいが、見立てた店員は未だ若造だったから自分の店の刃物にそこまでの愛情はなかったのであろう。アメリカ式の何でも使い捨てではなく、良い物を大事に使う日本の伝統をもう一度思い出し、使える物は何時までも大事にしたいと思う。キャリーバッグもしっかり直したし、僕は中々エコ生活をしていると自負している。今日は自慢ついでに、修理したキャリーバッグの写真も載せてしまおう。

                 (左の手前が自前の足)