baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 益々紛糾する中東情勢

 中東の民主化運動が止まる処を知らずに拡大している。チュニジアから始まった大衆デモが、チュニジアとエジプトの独裁政権を倒し、今や16ヶ国にまで拡大していると言う。バーレーンでは、王制打倒運動に発展しているそうだから、ヨルダンやサウジも安穏としてはいられなくなった。元々中東の王制は日本の天皇制やタイの王室と異なり、単に武力に優れた部族の長が近隣の部族を纏めてその長たるスルタンに就いたもので、歴史的には国民の尊敬を一身に受けているとは言い難い。近年は、石油から上がる利益が大きいので、その極く一部を国民に還元する事により上手く国内を統治して来たと言える。そういう意味では、アジアでもブルネイなどが良く似ている。更にはイスラム国では、支配者と被支配者の問題に加え、スンニ派シーア派の問題があり一層事態を複雑にしている。これらの宗派はムハンマドの死後直ぐに顕在化した、ムハンマドの従兄弟と弟子の間の宗旨の違いに起因しているから何時まで経っても平行線である。
 当然の事ながら、中東各国は沈静化に必死である。リビアカダフィ大佐などは昔から強硬で有名な独裁者だから、早速250名にも上る犠牲者が出ていると言う。力で抑えつけて何とか収めようと言う事であろうが、鎮圧にはアフリカ系の傭兵を高額で雇い、重機関銃や対空機銃まで使用しているそうだから事態は悪化の一途であろう。しかも、そこには根本的な改革が見えないから民衆は中々納得しまい。一方、米国は民主化の後押しをすると言うのが彼等の従来からのお節介な政策だが、リビアはともかくバーレーンクウェート、サウジなどの親米政権が後継政権の姿が見えないままドミノ倒しで倒れてしまうのは困るであろう。殊に、米軍基地の存続すら危うくなるとなれば、座視出来なくなってくるであろう。既にCIAやMI-6の暗躍が始まっているのかも知れない。
 ところが、米国が目の敵にするイランでも同様の運動が起きているそうである。イランはホメイニの帰国以来極右勢力が元気で、一時ハタミが大統領に選ばれた時には多少なりとも欧米とも上手くやろうとしている様に見えたが、結局は保守派に潰されてしまった。現在のラフサンジャニは「殆ど気違い」という点では隣の金正日、ヴェネズエラのチャベスと三羽ガラスだから、当然イラン国内の改革派は転覆を狙うであろう。イランの現政権は北朝鮮並みに危険だし、僕が希っているイスラム教と欧米の平和的共存という観点からも好ましくないので、他の国はともかくイランで民主化運動が実を結ぶのは、僕は大歓迎である。米国はと言えば、イランでは改革を後押ししたいであろうが、やり過ぎれば他の国で収拾が付かなくなるかも知れず、痛し痒しの中東の民主化運動と言う処であろう。
 先日中東の話を友人としていたら、彼は中国に飛び火するのではないかと推測していた。僕は中国は、沿岸の富裕層は既に充分市場開放を満喫しているからそれ程民主化運動に積極的とは思えない、貧困層は情報操作されている事もあり未だそこまでの纏まりはなかろう、異民族を併合弾圧しているチベットやウィーグル自治区は常に火元になる可能性があるが、最近はリーダー格が殆ど抹殺されているから当分大きな動きは期待できないであろう、と否定的な意見を述べた。ところがやはり上海など十幾つかの都市でデモの呼び掛けが始まり、治安当局は極端に警戒しているそうである。既に北京ではデモがあり、上海でも小規模ながら集会があったようである。当面そこまでは想像しなかった僕は、少し読みが甘かったのかも知れない。
 とは言え、中国で民主化運動に熱心なのは一部のインテリと学生程度、拝金主義の中国人だから富裕層は民主化には無関心だと思う。対する共産党は強権で警備を強化し、フェースブックやトゥウィッターを使えなくしたりインターネットをブロックしたりするから、今回は結局は中東程の拡がりは見せずに遠からず終焉してしまうだろうと、僕は今でも思っている。他方、中東ではリビアを筆頭に政権が転覆する国が出て来るかも知れない。イランがその一つなら嬉しいのだが。