baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 原発反対は分かるけれど.....

 今日はまた大きな余震が随分多い。特に夕方の5時から6時にかけては東京ですら3回も、それも一度はM7.0もあって随分酷く揺れた。それからも今に到るまで茨城県福島県辺りを震源とする余震が頻繁である。情けないのが東電の福島原発で、M7.0の地震でまた外部電源が止まったそうで、1号機から3号機への注水が50分止まったと言う。事故からもう1ヶ月も経っているのに、まだ補助電源がしっかり手当てされていないのである。主電源が止まったら自動的に動き出す発電機など世の中に幾らでもあるだろうに、どの位の電気が必要なのか知らないが、肝心の冷却水を注水するポンプ用ぐらいはさっさと確保しておくべきではないのか。素人考えでも分かりそうな事に、何時も後手後手で頼りない事甚だしい。
 例えば、瓦礫が大量の放射能を帯びていて、作業の邪魔になっていると言うのは当初から言われていた事である。一時は自衛隊が戦車を出動させたりしていたが、これも今頃になって、6日からだそうだが、やっと無人操縦の重機を投入したと言う。2号機のピットから高濃度汚染水が漏出した時でも、漏出源を特定する為に染料を投入したのは漏出が分かってから3〜4日も経ってからであった。どうして並行して色々な事が一度に出来ないのであろうか。政府もこんな頼りない東電任せにしておかずに、もっと率先して多方面の専門家を投入して、各事案毎に色々な意見を吸い上げると同時に、並行して次々と対策を講じて行くべきである。菅直人も、物見遊山の被災地視察や、何をしているか全く分からない復興担当大臣やボランティア担当大臣などと有名無為な辞令を発令している暇があるならもっと肝心な事が沢山あろうに。枝野幸男経産省原子力安全保安院にしても、徒に記者会見ばかりしていて何ら指導力を発揮しないから、何時まで経っても一向に安全回復の見通しが立たないのである。
 今回の事故を見て、何時まで経っても放射能漏れが防げない実体を目の当たりにし、退避命令を受けた地域の住民が着の身着のままで遠く離れた避難所に強制収容された悲惨さを見れば、原発反対と言いたくなるのは当然である。しかし冷静に見れば、原発の危険性は勿論あるが、それに輪を掛けたのが素人集団の民主政権と東電の無能である事は論を待たない。そんな事を知ってか知らずか、早速国内の原発を直ぐに運転停止せよ、などと言うデモが始まった。何事も結果論で騒ぐのは簡単だが、日本の電力の30%を賄う原発を急に止めてしまって本当に良いと覚悟をした上での主張なのであろうか。東電が輪番停電を実施しただけで、製造業の受けた被害は少なからず、交通混乱やガソリンスタンド休業など実生活に与える影響は少なくない。集合住宅であれば水が止まる処もある。水が止まればトイレも使えない。そういう生活を今すぐ始める覚悟が本当にあっての事であろうか。
 或いは太陽光発電風力発電にもっと力を入れろと政治家まで調子に乗って声高に騒いでいる。こういうクリーンエネルギーが良い事は20年も昔から分かっているが、立地の問題、発電能力の問題から、未だに主役になれない。今後もそう簡単に主役の座に名を連ねられるようになるとは思えない。従い、原発を止めるなら代替はまた化石燃料に頼らざるを得ないが、日本のように化石燃料をほぼ100%輸入に頼っている国が、いきなり発電能力の30%にも匹敵する化石燃料を急に手当出来る筈もない。
 原発を止めろ、と言うのは簡単である。しかし、それを言うなら、今の便利な生活を止める覚悟をしてから言うべきである。単純に言えば、家庭では夏場はエアコンを使わず、冬場は火鉢で暖を取る生活に耐え、製造業は生産量を30%落とす事になる。雇用も30%減らされ、失業者が大幅に増える事になる。道路は暗くなり、痴漢が跋扈する。そういう生活でも構わないという覚悟が出来たら、原発を即座に停止せよと言っても良い。口で言うのは簡単だが、馴れ親しんだ便利で豊かな生活を捨てるのは並大抵な事ではない。そういう生活に戻ると言う国民的なコンセンサスが本当に取れるであろうか。そこまでの覚悟も無く、現実的な代案も持たずに無責任に反対するのは無責任である。そういう無責任は共産党社民党だけで十分である。石原慎太郎は今年の夏の節電対策として、パチンコと自動販売機を止めてしまえ、と言っていたが、それ位では到底原発の穴は埋められない。しかし目の付け処が面白く、笑ってしまった。何よりも、具体的なアイディアがあるのが良い。
 実際には、今回の原発事故を教訓として、一層の安全対策を講じて行くことが余程現実的である。福島原発はこれ程の巨大な津波の被害を受けながらもチェルノブイリの様な核分裂の暴走には到っていない。多少破損した処もあるかも知れないが、原子炉は自動停止して生き残った訳であるから、見方を変えれば相当安全なのである。ならば最悪の津波の高さを見直して相応の防潮対策を施すのは当然として、貧弱だった事がはっきりした予備電源をもっとしっかりした、長時間運転にも耐えられる物にする、或いはより丈夫な予備の冷却回路を備えておくとか、最悪の場合でももう少し手際よく作業が出来るように無人化を進めるとか、考えられる対策は全て講じるべきであろう。今やコンビニでも道路でも、何処にでも監視カメラがあるのに原子炉建屋内の様子が分からない、等と言うお粗末な話は想像出来ない。福島が40年も経つ古い原発だからかも知れないが、「羹に懲りて膾を吹く」のではなく今回の事故を教訓として、更に安全な原発を目指すというのがもっとも現実的な日本の取るべき道であると思う。