baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 ウキウキする楽器のお店

 ここの処楽器屋づいている。元々はヴァイオリンを弾いたのだが、今では音を出すと自分で気持ち悪くなるので、もう長い事楽器には触れていない。それでも一応飾ってある。そして、年に一度位気が触れたように触ってみて、やっぱり気持ちが悪くなる。そこへ行くとギターとかカホンとかレコーダーは自分の本来の楽器ではないから下手で当たり前と、気楽に触る事が出来る。
 そんな僕が先日ある弦楽器奏者に弓の張り替えをする店を紹介した。お店の紹介は失敗であったが、その足で音楽家夫妻と食事をする事になった。奥方はアマチュアだけれども昔ヴィオラを弾いたそうである。話を聞くと随分上手そうな人で、楽器はアマチュアには勿体ない様な高価な楽器を持っていたと言う。理由は知らないが、ちょっと前にその楽器を何百万円かで売ってしまって今は楽器が無いと、ちょっと寂しそうな風であった。一度良い楽器を持ってしまうと、中途半端な楽器は買う気にならないのであろう。
 よせば良いのに酔った勢いで、それなら僕の玩具をお貸ししましょうかと切り出したら、結構満更でもなさそうだったのだ。僕は学生時代にアルバイトで溜めたなけなしのお金で買った安いヴィオラを持っていて、割と最近ある作曲家とモーツァルトのヴァイオリンとヴィオラのためのコンチェルトをやる約束をした。実は二人ともベロベロだったからなのだが、作曲家はピアノは勿論本職だが素人芸でヴァイオリンを弾く。ヴァイオリン・コンチェルトも作曲しているから楽器の事は良く知っているし猫に小判のような高価な楽器を持っているのだが、ヴァイオリンの腕は十人並み、それを知っているから僕がヴィオラを弾く約束をしたものだ。しかし、幾ら酔った勢いとは言え約束は約束なので、早速楽譜を買って来て一時は結構練習をした。ところが先方は一向にやる気を見せない。多分弾けないのであろう。それで最近は僕もまたヴィオラに触らなくなっていたものである。
 家に帰って早速ヴィオラのケースを開けたら、弓の毛が虫に食われたらしくてバッサリと幽霊の髪の毛の如くバラけていた。慌てて張り替えにまた先の楽器屋へ走った。ついでに松脂も新しいのを買った。そして帰って来て楽器の手入れをしていたら、今度は楽器ケースの内張りがボロボロになっているのに気付いた。仕方がないので、今度は別の楽器屋にケースを見に行ったが、気に入った物が無くてこちらはネットで輸入する事にした。これで来週位にはヴィオラを届ける事ができるであろう。
 しかし、楽器屋に居ると何だかウキウキしてくる。ヴァイオリンやチェロや弓が壁際に並んでいるお店にいるだけで、血が騒ぐ。ひょっとすると友人の奥方に嵌められているのかも知れないと思い出している。僕にヴァイオリンを触らせようとする陰謀なのかも知れない。