baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 やっぱり危ない新経産相

 鉢呂吉雄の後任に枝野幸男が就任した。経産相という重要ポストである。この男が官房長官の時は悪辣な菅直人の陰に隠れて分からなかったが、大臣になって自分の意見を表明し出した途端に小宮山洋子と同じ穴の貉であることが露見した。相当の左翼思想の持ち主のようで、経産相という資本主義に組み込まれた日本の経済と、その経済を担う産業界の発展を司る大臣としては非常に危うい発言が、僕が気になるだけで既に二件出て来た。就任二日にしてすでにこの有様だから、やはりこの人事も不適材不的所と言わざるを得ない。
 その一つは原発に関してである。即ち、一旦原発に頼らなくてもやって行ける社会を作って、その上で原発が将来的に必要かどうかの論議をしたいと言い出した。しかし話を聞いていると、菅直人脱原発路線をそのまま踏襲した発言のようで、目標は25年も30年も先の話ではなくすぐ目先の事のようである。噛み砕いて言えば原発は当分動かさないで、日本の総発電量の3割を担う原発を急に止める為に、先ずは旧式の火力発電所やらなにやらを総動員して、化石燃料を燃やしまくって、後は足りない分は我慢しろ、慣れろと言っているのである。相手が家庭なら、戦時中ではないがそういう暴論も理屈では可能である。しかし企業はそう簡単には対応出来ないし、原価も考えねばならない。ところが枝野幸男は、まず社会をそういう仕組みにしてから原発論議をしようと言っているのである。
 僕は、何も慌てて原発がなくても回る社会を作るのが先決だとは思わない。欧州が良い例だが、いままで頼って来た原発を無くすにしても、そこには25年や30年の時間を掛けて代替エネルギーを整備する必要がある。特に空洞化が問題になっている今の日本では、産業界が日本で生き延びる為に急激な電力事情の悪化があってはならないのである。他方、一部は原発に頼らざるを得ないからと言って、日本のエネルギー政策の議論が現状のままで出来ない事はない。将来をどうするのか、どういう方向に進むのかという議論を重ね、国民的コンセンサスを作るのに、原発の存在が邪魔になるとは思えない。脱原発が国民の総意であるなら、取り敢えずはある程度の時間を掛けて天然ガスを主体に代替発電所を整備すれば良い。ところが、性急に取り敢えず原発に頼らない社会を作る、と言う枝野幸男の発想は実は既に目先の脱原発に固まっているからとしか思えない。
 だから口では条件が整えば原発再稼働はやると言いながらも、同じ舌でこの冬も節電で乗り切ると言う。要するにここでも原発再稼働には消極的なのである。正に言葉は違え、菅直人の路線踏襲なのである。政治家のような、移動はつねに黒塗りの高級車で、会合場所は官邸か議事堂かホテル、駅などには近寄った事も無い人間には庶民の辛さは分からないのだろうが、この夏だって国民みんなが節電に勤めてやっと凌いだものである。エスカレーターが止まってお年寄りは駅の階段が上がれずに、数少ないエレベーターを延々と待たされ、昼間でも薄気味悪い薄暗い地下道を歩かされたこの夏であった。今度の冬はそこに「木枯らし吹きすさぶ寒い中を」となる。
 更に本当に不効率だったのは、企業が持てる予備電源の設備をフル稼働させられた事である。そんな電気はコストが高くてとても常識では普通に使う電気ではないのだが、菅政権が埋蔵電気を総動員しろと無理難題を吹っ掛けたものだからどこも持てる設備は止むを得ず使わざるを得なかった。或いは、電気を使う機械を止めて、ディーゼルエンジンで動く機械を急遽導入せざるを得なかった企業もあったと言う。自動車関連企業が木金を休みにして土日を出勤日にしたしわ寄せも小さくない。この事は新聞にも随分書かれているが、実際下請け企業は、相手が働いていれば土日も休みだなどと偉そうな事は口が裂けても言えないので、お盆以外は実質休み無しなのである。その不効率とコストについては、政府は一切関知していない。要するに、企業のコストの事など微塵も考えない政権の為せる技であったのだ。それでもこの夏は緊急事態だったので、誰も文句は言わずに粛々と我慢した。その節電をこの冬もまたやれと言う、何とも無節操な経産相なのである。先ずは定期点検が終わり、ストレステストをパスした原発を一刻も早く再稼働させるべく地元と話し合うのが経産相の仕事ではないのか。
 第二の問題発言は、東電絡みの債権者や株主に損を被れと言う幹事長時代の持論を経産相になった途端にまた言い出した事である。原発自民党政権以来の政府の政策であった。その原発が大きな事故を起こし、賠償金額が一私企業の能力を遥かに超える額にまで膨らんでしまった。当然政府が関与する必要がある。ところが、枝野幸男は政府が関与する条件として、一般金融機関と株主にも血を流せと言い出しているのである。株価も景気上昇の足を引っ張っている理由の一である事はご存じないようである。その株価の一番の重しが金融株である事など、尚の事興味も無いのであろう。
 経産相が金融機関に対して債権カットしろと要求する事は、政府が銀行に借金を棒引きしろと強要している訳であるから、言って見れば共産主義政府の遣り口なのである。東電が破綻して会社更生法を申請して、初めて債権カットの話も已むを得ない議題として上がるのだが、それもないうちから債権カットを言い出している。それも経産相と言う立場の人間がである。銀行がプロジェクトに融資したのなら、プロジェクトが破綻したら債権が戻って来ないのは致し方ない。しかし銀行が企業に融資したのなら、企業が存続する限りは返済は全額為されるのが当たり前である。借金をして返さなくて良い、などと言う馬鹿な話がある筈がない。その馬鹿な話を枝野幸男は当初から主張している。大手金融機関は、ちょっとやそっと債権カットさせても潰れない、むしろ大手企業からは出来るだけ金を絞り取れと言う、正に左翼思想に基づく発想のようである。以前にも書いたがこれは途方もない暴言、資本主義経済活動の原則を否定するもので、この事だけを見ればこの男は共産主義者なのである。
 株主だって東電株の暴落でもう充分代償は払っている。会社が存続しているのに、これ以上何をしろと言うのであろうか。株に投資しているのはブルジョアだから、もっと絞り取れという発想なのだろうか。こんな危険思想の人間が経産相とは、ミスキャストも良い処ではないか。野田佳彦の派閥均衡人事、国会対策人事は限度を超えている。