baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 衆院選

 鳩山由紀夫が次の衆院選に立候補しない事を決めたと言う。しかし、以前にも同じ事を宣言しておきがら恥じらいもなく後から翻意した訳だから、今回は少しも驚きはなく、むしろ何を今更と言う感は否めない。民主党が党の公認を与えるに当たって要求している、今後は党の方針に必ず従うという誓約書が書けなかったものと見える。鳩山は野田佳彦に対して、他の離党者の心情も思いもっと包容力を持って党運営をして欲しい、と泣き言を並べていたが、民主々義の原則は異なる意見を戦わした後は、潔く多数決に従うと言う事である。言うだけ言って、それでもどうしても自分の意見が通らないからと党の方針を無視して国会で反対に回ったり、棄権する事が罷り通ってしまえば政党としての役割は果たせない。誓約書の提出は、特に今の民主党にあっては当然の要求である。
 そもそも鳩山由紀夫は総理の座にあった僅か9ヶ月程の間に、自分の妄想発言の為にどれだけ日本が迷走し、世界で大恥を掻き物笑いの種になったかを思い起こすべきである。その事実を冷静に思い起こせば、今度の衆院選で立候補しても当選できる筈がなかろう。幾ら潤沢なお小遣いを使って選挙運動をしても、北海道の有権者はそれほど盲ではあるまい。元総理が次の総選挙で落選するという恥の上塗りをするよりは、この機に議員を辞めると言うのは懸命な選択であったろう。野田佳彦にしてみれば、これで小沢一郎鳩山由紀夫と言う、今の民主党にとって最悪の癌だった二人が消えてくれて定めし有難い事であろう。この上菅直人が落選して引退でもしてくれれば、これ以上の望みはない万々歳であろう。
 その民主党、既に「生活」の大量離党を初め解散後も離党者が後を絶たずに四散五裂してしまった訳だが、今回の衆院選を契機に一層党内を浄化して、政策を一にする政治家のみが集まる政党に脱皮する事が切に望まれる。太陽の党と維新の会の統合を「野合」と批判した野田佳彦だが、元々民主党が反自公政権で野合した政治家の集団であったのだ。そして、政治家の野合の結末が如何に世の為にならぬかを、これ以上はない程見事に見せつけてくれた。絵に描いた様な、決められない政治であった。しかし今回の大量離党を次へのステップとして捉え、党内の意思統一を図れる政党に衣替え出来れば、日本の二大政党政治が一歩実現に近付くのだと思う。何れ今回の総選挙では民主党自民党の後塵を拝する事は間違いなかろうが、一旦野に下り自分の足元をしっかり固める時期である。
 対する安倍晋三は、下馬評が有利に展開しているからか、或いは野田佳彦との違いを際立たせようとのスタンドプレーからか、随分乱暴な事を言い出している。1980年代後半のバブル全盛期の物価上昇率が1.3%だったそうであるが、安倍晋三の脱デフレの為の物価上昇率の目標は2%であると言う。その為に、日銀法を改正してでも資金をジャブジャブにしてインフレを起こそうという魂胆らしい。そして建設国債を、市場を通さずに日銀に直接買い取らせるとまで言い出したと言う。しかし、これは大変な危険思想である。うっかりするとハイパーインフレが起こりかねない。しかも物価が急上昇してデフレ脱却が出来たとしても、それに実体経済の実力が伴っていなければ、雇用情勢は好転せず物価だけが上がり庶民の生活は益々苦しくなるだけとなる。更には、収入が固定されている年金生活者が生活苦に陥る事は予想に難くない。何れは自殺者が更に増加するであろう。安倍の政策は、国債を大量に発行し、潤沢な円を日本中にばら撒いて無用の箱物を沢山作り、インフレを起こそうと言う安易な考えではなかろうか。小泉政権時代の、国債の上限は年間30兆円という自民党の政治目標は一体何処へ行ってしまったのであろうか。財政赤字改善の道筋を示す事もなく、旧態依然景気の良い事ばかりをぶち上げるのだとすれば、この3年間の野党生活で自民党は一体何を学んだのであろうか。
 経済を上向かせる事が今の日本に一番求められていると言う事に僕は異論はない。しかし、現在の不況の底には色々な要素がある。少子高齢化、極端な円高とそれに伴う国内産業の空洞化、雇用の悪化、国内消費の鈍化、等々がスパイラルで景気の足を引っ張り、この10月で貿易収支は5ヶ月連続の赤字となっている。この不景気回復には、辛抱強い不断の努力と国民の痛みが必要であり、そこに即効性の特効薬などはない。景気の回復と併行して財政赤字の改善も急務である。使える財源は限られていると考えなければならない。それを、安倍晋三が功を焦り、或いは民主党の無能さとの対比を鮮明にする事を急ぐあまりに、性急な愚策を講じればこれまた取り返しのつかない事になる。民主、自公と二代続けて政権が無能な政策を取れば、本当に日本はIMFのお世話になる三流国に転落しかねない。