baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 降雪から五日経った東京

 東京はたった1日雪が降っただけでどうしてこんなに大騒ぎになるのだ、雪国ではそんな事はニュースにもならないし、雪掻きなど日常の日課であるというブログ記事があった。雪国の人から見れば、その通りであると思う。しかも一晩に1mも積もる事がある豪雪地帯の人から見たら、一日降り続いて都心の積雪がたったの8㎝、そんなもの雪の内に入らんよ、なのであろう。そこで今日は東京っ子の愚痴を少し書かせて欲しいと思う。決して反論ではない、単なる愚痴なので気を悪くしないで頂きたい。下の写真は全て、5日も経っている今日の写真である。しかもこの5日間、毎日陽は射していた。
 先ず靴である。東京でゴム底の滑りにくいビジネスシューズを探しても先ず見付からない。雪国に行けば至極当たり前の冬靴を、東京で探すのは至難の業である。だから雪の朝はソフトスパイクの付いたゴルフシューズを履いたりスニーカーで出勤する事になるが、そんな靴では仕事に差し仕えのある時は履き替えの靴をラッシュの電車に持ち込むか、無理をしてでも滑り易い靴で出掛ける事になる。
 次は車の事である。僕は日本に帰って来てもう直ぐ12年、帰国してすぐに車を買い、同時にチェーンも準備した。僕は若い頃には随分スキー場に出掛けたから、今でもチェーンは常に常備品で、何時でもトランクに入っている。しかしこの12年間、練習以外では結局一度もチェーンを使った事はない。東京にいると電車もバスもあるし、車の需要もチェーンの出番も所詮はその程度なのである。だからスキーに行く人でもなければ、スタッドレスを持っている人はいない。そして今回の様に天気予報が外れての突然の大雪だと、渋滞にはまっている中に雪が積もり出してしまう事もある。不用意と言えばそれまでの事だが、しかし多少の情状酌量の余地はある。特に首都高などで渋滞につかまれば、下りるに下りられず、逃げるに逃げられないのである。しかもチェーンを履くスペースなど、都内には何処にもない。勿論雪の怖さを知らない、無知なドライバーであると言われれば反論はない。そして雪道での運転不慣れである。雪に捕まってしまい坂道が登れなくなったとしよう。後続の車から人が出て来て押してくれる。ところが運転している人が雪道を知らないから、やたらにエンジンを吹かしてしまう。エンジンを吹かせば吹かすほど車輪は空回りし、車は左右に振れるだけ、しかも足場は益々悪くなる。焦った挙句に、こうして身動きが取れなくなる運転手が極く普通なのである。
 インフラでは、先ず道路の除雪車などは皆無、鉄道でもラッセル車など持っていない。だから幹線道路と雖も、積もった雪は何時までも残ってしまうし、電車は直ぐに止まる。幹線道路で事故が懸念される場所では、警官がスコップで除雪をする。

(幹線道路の交差点のゼブラゾーンは5日経っても未だこの雪。これでも雪の翌朝に警官が除雪していた場所である)
 しかも除雪で出来た雪溜まりの雪を何処かに投棄する訳ではないから、雪の塊が何時までも通行の障害となる。東京にはアスファルト水害防止の為に、化け物の如く巨大な地下水槽は既に幾つかあるのだが、雪を投棄するシステムはない。

 側溝はあっても道路の融雪装置は皆無だから、車道と言わず歩道と言わず、積もった雪はスコップで除雪しない限りは何時までも残ってしまう。

 集合住宅には庭がないから、自宅にスコップなど持っていないのが普通である。そういう住人にはそもそも除雪の手段がない。中には塵取りでやっている人もいるけれど、塵取りでは腰は痛くなるし、中々捗が行かない。

 と言う訳で、お恥ずかしい話しながら、東京では都心で雪が積もるぐらい降雪があれば、やはり公共交通手段は麻痺するし、転倒して犠牲になる人がどうしても出てしまうのである。今回は2名の犠牲者が転倒で落命した。歩き方が不注意だったのだろうが、雪道に適した靴がなかったのかも知れない。1名は未だ若い女性である。東京の人間が日頃の不覚悟を棚に上げて大騒ぎをしている訳では決してなく、事程左様に雪に不慣れな東京人にはこの程度の積雪でも中々に大変な事件である事を、多少なりとも理解願えればと思う。