baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 日本にも望まれる本格的な情報機関

 今般のアルジェリア人質事件の教訓として、緊急時の邦人救助の為に自衛隊の派遣を可能にする自衛隊法改正が急に政府だか自民党の中で言われ出していると言う。しかし、単なる救援機派遣程度であればそれ程大騒ぎをする事もなかろうし、実際に戦闘部隊が人質救助の作戦に従事するような事まで検討しているのなら止めた方が良い。幾ら訓練を積んでいても実戦経験もなければテロ事件の経験もない自衛隊が、それ程役に立つとは思えない。それ以上に、主権国家である他国がそう簡単に日本の軍隊の作戦を受け入れるとも思えない。そんな、余り現実味のない事にエネルギーと予算を割く事はない。
 僕は今日本に必要なのは本格的な情報組織であると思う。日本の情報組織は内閣調査室、自衛隊警察庁、外務省、海上保安庁などに分かれて存在するが、何れの情報力も公表されている情報の分析程度に過ぎないと想像される。現に僕は内閣調査室の調査員と以前知り合いであったが、一応表向きは別の肩書を持っていたので一見それらしい情報員かと思いきや、彼の仕事は毎日現地の新聞から目ぼしい記事をピックアップして、必要に応じてコメントを付して日本に送る事であった。所謂スパイとは全く懸け離れていた。同じく駐在武官とも知り合いであった。プロの目で見れば、その国の軍隊の装備や練度は一目瞭然であったらしい。兵隊のベルトのバックルの磨き具合や軍靴を見るだけでも、軍のレベルは分かるものだと言っていた。そして重要な情報の95%は、素人でも日頃何気なく目にしている事だと言う。恐らくその通りであると思う。従い情報の分析力が非常に重要になる訳である。しかしそのレベルの情報しかなければ、他の国の情報機関との情報交換は望むべくもないし、人質事件の様な凶悪事件が起きた時には、犯人、動機、目的などの情報は中々手に入らない。何故なら日頃そういう特別な人脈が作れていないからである。それが欧米や中国、ロシア、韓国などと我が国との決定的な違いである。
 折から日本独自の偵察衛星が今日無事に打ち上げられた。これで数か月後には米国からの情報に頼らずとも、我が国独自の情報源が確保された事になる。もっとも、衛星の能力は他国にひけを取る物ではないと思うが、そこから送られてくる映像の分析ノーハウには未だかなりの遅れがあるのではなかろうか。折角の衛星打ち上げであるからには、ハードだけではなくソフト面でも早くキャッチアップして偵察先進国の仲間入りをして欲しいものである。何はともあれ、これで高々度からの情報取得には道が開けた。しかし地上での情報収集能力は相も変わらない。
 僕が外地にいる時には、その国のリスクが高まると必ず外資系の会社から売り込みがあった。警備会社であったり情報会社であったりするのだが、例外なくCIAかMI6上がりと思しい目つき鋭い白人が経営する会社であった。そしてそういう会社には、海兵隊上がりか傭兵経験者と思われる屈強で目の座った人間が必ずいた。彼らは常に独自の情報源を持っており、我々邦人社会の事も、こんな事までと驚くほど裏情報に通じていた。誘拐事件があれば、我々が頼るのはやはり欧米の専門の会社である。彼らは常に一般的な裏情報に通じているから、犯人へのアクセスも早いし交渉もプロである。莫大な手数料を取られるが、成功率は高い。ところが日本にはこういう会社はないし、その道のプロもいない。何故なら日本では本当の意味でスパイ教育を受けた人間がいないからである。だから日頃の情報源は少ないし、いざとなった時には手も足も出ない事になる。自衛隊の海外派遣よりも、先ずは専門的、且つ一元化された強力な情報機関の設立が真剣に検討されるべきである。
 そんな僕の苛立ちを余所に世間には、偵察衛星の性能や運用方法をもっと公開すべきであると言う声があると言う。スポンサー国の役に立つ情報が少しでも欲しい共産党社民党が言うのなら仕方がないが、国の安全保障の根幹を為す機密事項を公表せよと言う声がある事自体、我が国の平和呆け具合が分かろうと言う物である。